ワールドプロレスシリーズ

古書ヲタ100冊組手!
個鴉は2005年中に書籍100冊読破する事をここに誓います

ルール

その1・・・古書ヲタ与太話の過去の紹介本はカウントには入れない。但し、出版社違いで読破した場合又は再読した場合はその限りでない。再読の場合は注意を入れること!(例・夜明け前は岩波書店、新潮文庫から出ているが、出版意図の違いから内容に相違がある、もしくはより原典に近い等)
その2・・・無理な読書はしない。まったりと読む事!
その3・・・全集関連や分冊については1冊でもカウント一つとして数え上げられる。

達成!

なんとか達成致しました!
いや、罰ゲーム《真冬に露天風呂で風呂につからずカラオケを三曲歌う》
絶対に勘弁!

なお、この続きは【古書ヲタ与太話】でお楽しみ下さい。


組手リンク
紋次郎。殿の入浴剤百人組手(不夜城・試練の間) 祝!達成!
哲坊殿の日本酒/焼酎百人組手(各駅停舎)
於我殿の斜め読み百人組手(OGA'S Village 歴史で遊ぼう)
吉三郎殿の薫物(たきもの)百人組手


評価は古書ヲタ与太話に順じ、全12段階評価
☆〜☆☆☆☆☆☆ お勧め度
-★〜-★★★★★★ お勧めしません度
★〜∞ 常軌を逸したサイキック度



書籍名・出版社 日 付 感 想 写真・評価
1 歴史哲学 上巻 1月4日 「哲学の英雄」と言われたヘーゲル哲学で歴史から哲学を考える本。正直書きますとヘーゲル哲学は難解すぎるので、個鴉はヘーゲルの視点から眺めた世界史という形で捉えましたら、これが結構面白く読むことが出来ました。上巻はアジア史の概要からはじまっていますが、西洋人から見たアジア史観というのは「なんだかなあ〜」と考えてみたり(苦笑
ヘーゲルが「理性」という言葉を多用している処に注目すべきでしょう。でもやっぱ
西洋哲学は難しいざますなあ〜(頭痛

☆☆☆
絶版!
ヘーゲル
武市健人 訳
岩波文庫 青-629-9
2 外から見た近代日本 1月5日 比較文明論から日本の近代化を眺めた本。南北戦争と明治維新を比較検討するというのは結構ユニーク!フランス革命と明治維新との比較検討は結構されているだけに異色ともいえる。
更に日米間の緊迫化を当時発刊された仮想戦記小説から読みとこうとする視点はおもしろい。岡倉天心はコスモポリタン(国際人)か、ナショナリスト(国粋主義者)であるのか。アメリカ人の手によるはじめての日本人論など、文化接触によるカルチャーショックから眺める歴史観という事で面白く読みました。


☆☆☆☆
お勧め!
佐伯 彰一
講談社学術文庫 645
3 海舟語録 1月6日 勝海舟の幕末維新・そして明治政府への毒舌などをジャーナリスト巌本善治が纏めた本。それを江藤・松浦両センセが当時の勝の言葉に近い状況まで再現。講談社の勝海舟全集用に編纂した「海舟語録」を今回は学術文庫用に纏め直した本。
勝の戯言や奔放な物言い、そして明治維新期の秘話や、当時の明治政府に対しての毒舌など言いたい放題集となっている。
岩波文庫からも同様の本が出ているが、戦前に出版されている為に天皇関連の記述に一部リライトがされているとの事。また、講談社学術文庫版は、勝の詩歌集がカットされており残念!
それでも作品の質が下がったわけではなく、単行本化された分、読みやすくなっています。

☆☆☆☆☆
チョーお勧め!
★★★★★
勝海舟
江藤淳・松浦玲 編
講談社学術文庫 1677
4 歴史哲学 中巻 1月7日 ヘーゲル歴史哲学の中巻。ギリシャ世界とローマ史から哲学を考察する。
ヘーゲル哲学の説明そのものが、最早「哲学」ともいえるざますからして解説や感想そのものが難しすぎる!その上、シロウトの鴉が、この本の感想を書くにもヘーゲル解説書を2〜3冊読む始末。その解説書そのものも「哲学書」だからして益々頭がパニック!あぴゃぴゃ〜!!!!!!
但し、これを「哲学」と捉えずに「ヒストリー」として読むなら、これほどおもしろい話はない。ギリシャ史、ローマ史を読んで楽しむという事ならば、差支えはないざますよん。

☆☆☆
絶版!
ヘーゲル
武市健人 訳
岩波文庫 青-630-0
5 復讐と法律 1月7日 「讐には讐で報いたならば永遠に復讐は繰り返される」
復讐という歴史をどうすれば断ち切れるのか?例証を挙げて法律の発展と共に復讐がどのように変遷したかを書き記した本。

法の起原に関する私的公権力化の作用
復讐と法律
差押は民事法の起原たり
刑法進化の話

より構成。

法律の専門書でありながら、「復讐」という歴史の発展段階を個人的な復讐から、法的見地からの「復讐(例えば刑罰など)」を説明した本。この元本が発刊されたのが昭和6年。74年経過した現在も「讐には讐で報い」る状況というのが現実というのも間の抜けた話。そして、これまた間抜けな話であるが「讐には讐で報い」る事を学問の世界に持ち込む
バカがいる事である(呆。オイラはそういう議論に対してアウトオブイヤーざますよん。

☆☆☆☆
お勧め
穂積陳重
岩波文庫 青147-3
6 ある歴史家の生い立ち
古史辨自序
1月7日 中国史の大家である顧の自伝。
古代史を厳しく史料批判を行い、中国3000年の歴史を改めて紐解く過程が書かれた本。今までの中国史書はヒストリーなのか、ストーリーなのかちゃんぽんになっており、更に当時の軍閥時代の中国に於いて困難な状況で、如何に学求を行ったのか。

訳者である寺岡氏は、戦前は顧氏の弟子という事で、後書きで当時の様子がか書かれているが、日本人だからといって別にイデオローグな発言をする訳でもなく、後の四人組時代でも変わらぬ交流を続けられたそうです。

☆☆☆☆
お勧め!
顧頡剛
平岡武雄 訳
岩波文庫 青 442-1
7 南柯紀行
北国戦争概略
衝鉾隊之記
1月12日 幕臣、大鳥圭介と今井信郎による旧幕府脱走兵が北関東から宇都宮、奥日光、会津、そして北海道・函館まで戦った記録と大鳥の獄中日記。かつては「幕末実戦史」という名前で出版されたが、この度新選組研究家でもある菊地明氏により、初出である「旧幕府」に記載された当時まで再現。またリライトされた部分を訂正して再出版された本。戦記記録ものとしては最高の物!特に戦術面で「予備兵力」「補給」を意識する用語が出てくるなど西洋兵学をマスターしていなければ出てこない用語が書かれている。それだけでなく、播州赤穂という関西圏出身という事なのか、時々『オチ』がついており(自分で作った牢屋に自分で収監されたよ〜んなど)、コテコテな部分もあり(苦笑

また、記載した大鳥自身が自己弁護じみた「いやしい」部分もない所、大鳥がなぜ戊辰戦争に参戦する為に旧幕府歩兵2000名(大藩の戦力に匹敵する)を率いて脱走したのかも明確に書かれていないなど、かなり興味の湧く本である。
兎角、
土方ファンの腐女子に評判の悪い大鳥であるが、小説家の語る土方の能力についてはオイラは大いに疑問。彼が緒方洪庵主催の「適塾」出身であり、幕府の最高の兵学校とも言える「江川塾」出身のテクノクラートであるばかりでなく、50俵取りの叩き上げで、ヤクザや職人など荒くれ達の集まりである「幕府歩兵」2000名を統率した事を考えれば、どちらが有能かは一目!
菊地氏も解説で「大鳥を変節と非難するのは的を得ていない」と今までの大鳥批判を一蹴しているが同感!

☆☆☆☆☆☆
超絶お勧め!
★★★★
大鳥圭介・今井信郎
菊池明 解説
新人物往来社
8 歴史哲学 下巻 1月17日 ヘーゲル「歴史哲学」の最終章で、ゲルマン世界からイスラム世界、中世期フランク朝を経て十字軍、ルネッサンス、キリスト教権から封建制度、絶対王権の確立、フランス革命までを描く。
哲学として読むと難解であるが、ヘーゲルの西洋史本として読むならばなかなか好著。そこから
「歴史の哲学」とはを考えればいいのではと個鴉はかんがえるのであった。
上、中、下巻三巻共に哲学書としてではなく、西洋変遷史として読むとおもしろい本ではありました。なお、単行本は絶版ですが、岩波書店ヘーゲル全集として販売されてはいますが、旧漢字、カナ使いの為に読みづらいです〜!単行本版は現代カナ使いですので、古書市か学生街のブックオフで見つかるかもしれません。

☆☆☆
絶版!
ヘーゲル
武市健人 訳
岩波文庫
青630-1
9 日本警察の父・川路大警視
幕末・明治を駆け抜けた巨人
1月17日 明治警察の父ともいえる「川路利良」の半生を描いた本。
南海の蛮族「シマンズ」の武士の中でも下級階層である郷士より更に下である卒族から、禁門の変より伸し上がり、遂に日本警察の頂点に立った川路の警察への姿勢と、薩摩閥での彼の立場、最後の西南戦争に於ける川路の状況をかなり公正に描いている。大久保利通に次いで明治の功臣の中では今でも嫌われている川路であるが、彼を顕彰する銅像すら平成11年にやっと建立されたとう点、そして西南戦争で川路の一族が士族軍に虐殺された事実を考えると、地元鹿児島に於ける川路を見る歴史観というのが如何に厳しかったか。
この本では戊辰戦役についてはかなりの齟齬があるが(揚げ足を取ると鳥羽伏見で後装銃が前装銃より優れている等)、それはそれ。特に征韓論を「西郷VS大久保」として捉えるのではなく、「江藤新平率いる肥前閥VS大久保」と解釈されているのに納得。
巻末に川路が書いた「警察手帳」が口語訳された物が乗っているが、今の役人に読ませたい内容ではあるざます!特に
ポリバケツにな!

☆☆☆
加来耕三
講談社+α文庫 E-1-7
10 日本とアジア 1月17日 西洋化の促進こそが日本の取る道であったのか。他に道が無かったのか?アジア主義とは何か?ナショナリズムとは何か?魯迅の研究家でもある著者がアジアという視点で日本の近代化を批判した歴史哲学論。第二次大戦に対する批判も含まれており。考現学的考察本でもある為に、戦前の政治体制に対して批判的。だが戦後のマルクス思想についても厳しく批判。日本のアジア主義についても国粋的な物の味方についてはバッサリと斬りすて。また岡倉天心、北一輝の人物論も書かれている。
中国関連については現在の中華主義的勢力浸透について欠如しているが、昭和40年代の論文という事でそれはそれ、という事で。(歴史観については共鳴できない部分も多々ありますが)イデオローグでは香ばしい所もあるにはあるが、それを拒否せずに読むとおもしろい部分もあり。(あまりイデオロギーで見ると真実を失うかもしれない。本を読むときは頭の中でバッサリと意識しないように読むといいかもしれません。)

☆☆☆☆
お勧め!
竹内 好
ちくま学芸文庫 タ-9-1
11 宮本常一、アフリカとアジアを歩く 1月17日 民俗学者であり百姓である宮本常一のアフリカとアジア紀行文。
「東アフリカを歩く」ではケニアやタンザニアを中心に、かの地の農村を廻ってアフリカの農村部の問題と将来性につういて書かれている。「済州島をあるく」では、海人(あま)について日本の海人と比較。文化の伝承と海人の変化について語られている。「台湾をあるく」では、既に失いつつある日本の農村部を台湾に見出している。「中国を歩く」では、中国のジャンクと日本の遣唐使船を比較するなど、宮本民俗学を世界の視点でながめたおもしろい本。
百姓はどの国でも万国共通というか(笑)。どこでも自分の生活を向上しようとかんばる百姓の姿を読むと、戦後日本の荒廃した農家の復興期とどこか似ているようである。アフリカ・ケニアの人懐っこいアフリカーンの百姓達や、海人の変遷史など興味が尽きない。
余談ながら、当hpでは農民を百姓と表現している。百姓を農民と呼ぶのは差別を誤魔化しているようでオイラ的にはいただけない。

☆☆☆☆☆
チョーお勧め!
★★★★★★
宮本常一
岩波現代文庫 S32
12 徳富蘇峰
日本ナショナリズムの軌跡
1月20日 明治・大正・昭和を生きたジャーナリスト徳富猪一郎こと蘇峰の著書より彼の持つジャーナリズムの視点と、思想としてのナショナリズムの限界を考える。
彼のジャーナリストとしての国家主義的煽動と、オポチュニストとしての問題としての「転向」などか批判の対象となり、現在でも著書が正統的に評価されていない。特に国民主義から国家主義に転向した段階で、今でも罵倒の対象となっているが、それを単純に批判してよいかは個鴉も疑問。
蘇峰の主張が「日本を国際社会の中で敬意ある地位と待遇を受けさせよ」という一環した考えと共に、日本のナショナリズムも蘇峰と共にあった事を考えると、日本の於かれた国際環境、周辺アジア諸国との摩擦、ヨーロッパ諸国との関係などもう少し俯瞰的に考えてイデオロギーだけで蘇峰を見るだけではいかんのではないかなと。(先に紹介した「日本とアジア」を読むと益々考えさせられてしまう。嗚呼)
蘇峰の持つ思想については、近世日本国民史にも垣間見えるが、ナショナリストとして、又はリベラリストとしての蘇峰の考えが時代と共に複雑に絡んでいる所など、蘇峰の修史に対する態度について考える事が一つのヒントではないでしょうか?

☆☆☆☆☆
チョーお勧め!
中公新書 1711
米原 謙
13 近世日本国民史30
開国日本@
ペルリ来航以前の形成
1月21日 織田信長・豊臣秀吉の時代から、明治維新を隔てて、西南戦争での西郷自刃と大久保暗殺まで大正7年(1918年)6月から昭和27年(1952年)まで34年もの歳月と全101巻(101巻目は図版)もの膨大かつ空前絶後の歴史本。これを個人で書いたという事が凄いのだが、本の中身も莫大な引用文献、それも全て一次史料ばかりであり、これらを引用し、かつ比較して考える所が凄すぎ。皇国史観というイデオロギー批判はあるが、そういった方々が蘇峰の「近世日本国民史」を無断引用している所に問題があるとオイラは考える。国民史だけしか乗っていない史料もあり、また蘇峰は支配者層から庶民までの視点で修史を考えており、薩長史観だ会津原理主義だマルクス主義だのとのおおたわけでみみっちいイデオロギーで批判するのはおかしな事である。ゴーストライターに書かせている研究家や作家よりははるかにマシだと思うがね。

今回は40巻を紹介。ペリー来航前の日本国内の情勢、特に幕府の態度について蘇峰は徹底的に批判。ペリー来航については教科書だけ読むと突然来たような印象が書かれているが、実はそれ以前よりオランダを通してペリー艦隊の構成やペリーの情報は正確に幕府に伝わっていたのだが、この巻ではペリー情報を掴んでいながら幕府の外交態度に
ダメじゃんの烙印。
それより、幕府の下層役人や諸藩顧問等(佐久間象山)の海防意見に注目!しかもほぼ全文引用は凄すぎ!

☆☆☆☆☆☆
超絶お勧め!
だが絶版!
徳富蘇峰
講談社学術文庫 378
14 藤田東湖 1月22日 水戸藩主、徳川『グレート』斉昭のブレーンである藤田彪(東湖)の著作と父藤田幽谷、会沢正志斉の著書を口語訳した史料本。
回天詩史
常陸帯
弘道館記述義
新論
修史始末(藤田幽谷)
東湖随筆(会沢正志斉)
見聞偶筆
より構成。
回天詩史、新論共に当時の『尊皇攘夷』思想に影響を及ぼした著述であり、口語化した本とはいえ、水戸学(天保学)と言われたイデオロギーの発端が理解できるようになる。修史始末には「助さん、格さん」のモデルだけでなく、なぜか「八兵衛」なる人物も出てくるので「もしやうっかり八兵衛のモデルかあ?」と思ってしまったり(笑
こういった一次史料の価値が在る本の口語訳について、訳した人間の主観が入るというが、読まないよりはマシざます。というか結果的に本を読まないと歴史の探求ができなくなるざますよん。

橋川氏の水戸学に関する解説も書かれており、水戸学の初歩を知るには分かりやすい本となっております。いやホント中公バックスは岩波よりもわかりやすい(笑
☆☆☆☆
お勧め!
橋川文三 責任編集
中公バックス
日本の名著 29
15 清河八郎の明治維新
草莽の志士なるがゆえに
1月24日 幕末の策士「清河八郎」を佐幕・維新とセセコマしいイデオロギー的見識で見るのではなく、草莽の志士として改めて視点を変えて書いた本。
幕末関連の『小説』では悪役にされている清河八郎であるが、彼の出目からそう思われるのか?清河に言わせると“藩”に縛られている武士などアウトオブ眼中というところであろうか。そこに草莽の志士たる特徴であるのだが。その点で「夜明け前」の主人公のモデルである島崎正樹も確実に草莽の志士の一人とも言える。
巻末に清河が関わった故に結成された浪士組の派生である新選組、新徴組の小史もあり。清河の視点で眺めた感覚で書かれているようで、殺されたとはいえ、維新史に名を残すだけに清河の影響を単に貶めて見るのは(それが小説とはいえ)どうかなと鴉は思う。

☆☆☆
高野澄
NHKBOOKS 994
16 歴史随筆 管公と酒 1月25日 日本史研究家である坂本太郎氏による歴史エッセイ集。個人の逸話や、恩師の追悼文、歴史教育に対する問題点にチクリなど書かれている。
歴史教育批判については、戦後民主化とその反動でもあるイデオロギーの先鋭化により「神話教育」の否定についての反論文「歴史教育私観」を読んでいくと、戦後マルクス史観も戦前の皇国史観と五十歩百歩だなあと苦笑するばかり。この辺で本来「読み物」の部分を持つ歴史を象牙の塔はつまらなくしているなあっと苦笑して見たり。
なにせ、坂本センセのようにエッセイが掛けない歴史学者がいっぱい。

タイトルの意味は学問の神様「菅原道真」と飲酒に絡む話からだそうです。

☆☆☆☆
お勧めだが
絶版!
坂本太郎
中公文庫 M174
17 鎖国と海禁の時代 1月26日 江戸時代に対外関係を閉ざした“鎖国”という表現は正しいのか?また、海禁も言葉を変えただけではないのか?
鎖国令に関する疑問を投げかけた、江戸研究のエキスパートである山本博文センセの論文集。島原の乱とイスパニアの奴隷売買に危惧した徳川幕府が鎖国を布いたとされる鎖国制度で、東南アジア諸国が日本同様に鎖国政策を採るようになったのかと、それでも海外から、事に当時の朝鮮半島同士の交流、沿岸防衛体制など「鎖国と海禁」について学術的に見つめ直す。
論文集故に鎖国関連の応用書ともいうべき本なので、鎖国そのものを知るには辛い本ではある。

日本人の渡来禁止措置としての解禁政策(山本センセはこの海禁という言葉にも疑問附を投げかけているが)をきちんと抑えておかないと、幕末のペリーショックからの影響と、故に明治維新が起こった発端が掴めない。オイラも含め幕末歴史ファンは、改めて過去を振り返る必要が大いに在ると考える。

☆☆☆
山本博文
校倉書房
18 韓非子
中国の思想〔T〕
2月5日 東洋のマキャベリとも言われている韓非の政治思想論文集の中から抜粋して分かりやすく解説した本。
秦の始皇帝が「ああ、これを書いた者に会えたら私は死んでも構わない」と述べたほど言われるぐらいで、統治者が法体系によって如何に国土を支配するかが書かれている。当時、分裂国家であった中国(春秋・戦国時代)を背景に考えると、一個の独裁者が全土をどのように支配してゆくのかについての心得と、法治主義の非情さについて、過去の事件やおとぎ話を例にとりながら、権力者が法(法体系)と術(支配)を使いこなすかが書かれている。
マキャベリについても分裂イタリア時代に、国家統一の法と支配について書かれたのが「君主論」であり、また韓非も春秋戦国末期に国家統一の方便として書かれたのが「韓非子」である事を考えると、この奇妙な一致はなんであろうか。マキャベリの君主論が当時取り上げられず、死後に危険な奇書として発行禁止にされるか、一部権力者に読めれた事や、韓非が祖国〔韓〕を見限り秦の始皇帝に取り入ったものの、側近の謀略で排除されたと言う点でもなにやら共通項があるようにも見える。
知人が読んだ時に「震えた」と言っていたが、権力者が常に考えるべき哲学ではあるが、反面切り捨てる部分は斬る捨てないと自らを滅亡させるなあっと考えてしまった。

☆☆☆☆☆
チョーお勧め!
西野広祥+市川宏 訳
徳間書店
19 藩政 1月30日 江戸時代の大名領の単位としての藩について、藩の形成、成立から崩壊までのプロセスについて概要と研究について記された本。
藩という名前は実は江戸時代当時は称された事は無く、新井白石が藩幹譜で使ったぐらいで明治維新に「藩」と便宜上の単位で言われたぐらいというのは意外と知られていなかったりして。
藩政研究についての方向性について書かれてはいるが、専門書故にとっつきづらい所はありました。

☆☆☆
絶版!
金井圓
日本歴史新書 40
至文堂
20 その後の慶喜
大正時代まで生きた将軍
2月1日 最後の将軍「徳川慶喜」のその後の話を家近良樹氏が「徳川慶喜家扶日記」を駆使して慶喜本人が明治、大正時代をどのように生きたかを探求した本。家近センセが方を抜いて書いたと言うだけになかなかサイキック度濃厚(笑
何かと政治的姿勢が原因で批判の多い慶喜ではあるが、明治以降に政治的言動が少ないのは意固地になって語らないだのと諸説あるようだが、家近センセは明治新政府になった後でも政権がグラついている状況下で発言には注意しなければならない状況と、旧幕臣「勝海舟」が死の直前まで慶喜の行動を監視していたなどおもしろい説が書かれている。
彼の後の人生について、家近氏は「穏やかで幸福な人生」と書かれているが、政治にタッチしなかったこそ平凡に過ごせたとも思えるし、政治にタッチしなかったから無駄なストレスも溜まらなかったとも言える。
この本を読むと、慶喜の考えの末端が書かれており、幕末に於ける慶喜の政治姿勢も理解出来るようになる。特に石清水八幡宮に於ける腹痛事件が仮病ではなく、慶喜自身はどうも緊張すると腹痛癖があったので「ボクチンポンポンが痛いのお〜。だから今日はお休みするから〜」事件はどうも真実のようであると。この辺は注意すべきであろうか。

個鴉の考えながら、徳川慶喜批判についてもうすこし理性的に、かつ複眼的に考えないと大政奉還と王政復古のクーデターすら御都合的に解釈されて危険かなあと考える。

☆☆☆☆☆☆
超絶お勧め!
★★★★★★★
家近良樹
講談社選書メチエ 320
21 西洋文明の現像 2月6日 中世期の西洋文明から現代のヨーロッパの状況までを比較しながら西洋文明が内在する文化文明の深層を探る文明論。中世期に於けるヨーロッパの成立と、キリスト教の持つ哲学などから、今日の統合化されようとするヨーロッパの問題点と未来など考察しながら書かれている。歴史とは当に過去から未来まで常に因果関係を持っていると改めて関心してしまった。

日本人の特性として「過去の事は水に流せ」という事が西洋では「ふざけろボケ!」となるのはキリスト教に於ける「人間は生まれながら罪深い」という諭旨がある故に、自己の反省もなく、又自らの正当性も主張しないのはヨーロッパ人にとって侮辱であるという所がおもしろい。所謂へーゲル哲学の弁証法に於ける、
ぶん殴る「テーゼ」殴り返す「アンチテーゼ」、そして御互いに痛いのでなんとか痛い目にあわないように妥協点を見つける「ジン・テーゼ」という近代ヨーロッパ人の哲学が分からないと、彼らの西洋人の論理は理解できないらしい。
ヨーロッパ人の「法と社会」の理念から日本人の持つ「法と社会」を批判した所もあり、著書の初出が昭和49年、学術文庫版が昭和62年と約30年前でありながら現在於かれている日本の状況が当に批判されている部分とも言える。

☆☆☆☆
お勧め!
木村尚三郎
講談社学術文庫 815
22 人口から読む日本の歴史  2月7日 日本の人口の変遷を歴史的に分析した本。
文明のシステムの向上により人口が膨れ上がり、逆に文明そのものが問われている現代は人口が減りつつあるという。なぜこのような変動が起きるのかを推察している。
現代日本で若年人口が減っているのは社会システムの大変動により人間の本能として自然な『間引き』が行われているのだそうだ。現状での人口ピラミッドが老年層が多くて若年層に負担が掛かっている歪んだ状況が、人間の本能として子供を作らない傾向になっているのではというのが鬼頭センセの説だが、なんとなく納得。

☆☆☆
鬼頭宏
講談社学術文庫 1430
23 近世日本国民史31
開国日本A
ペルリ来航およびその当時
2月8日 ペルリ(ペリー)の浦賀来航による日本国内のドタバタ騒ぎと、対策皆無とまで酷評された徳川幕府の狼狽、当時の識者から見るペリーショックの対策、そしてペリーに継ぎロシア艦隊の長崎来航と外交交渉などいよいよ維新変革のプレリュードと徳川幕藩体制のレクイエムが交差する。
ペリーショックについて蘇峰は「ペリーに恩を感じるなどちゃんちゃらおかしい、そうではなくハリスこそ好意的に記憶すべきだろう」と独自の歴史観が出ている。ペリーとの交渉に関わった香川栄左衛門の報告や開国意見として徳川斉昭の攘夷論と、高嶋秋帆(喜平)による開国論など初見の一次史料を見るとペリーショックが突然降って湧いたのではなく、遂に来たかと言う見識(ペリー来航はオランダ領事ドンケル・クルチウスから通報されていた史実がある)である事が分かる。
又、ロシア艦隊のプチャーチンと川路聖謨との外交交渉で現在でも問題となっている北方領土問題(注・国民史31作成時は昭和9年で北方領土は日本領である)が討論されており、この問題の根の深さが描かれている。

☆☆☆☆☆☆
超絶お勧め!
だが絶版!
徳富蘇峰
講談社学術文庫 379
24 天狗党始末記
変革への挑戦
2月10日 幕末水戸の悲劇である天狗党の乱を水戸の視点より書かれた本。小説的な書かれ方をされている故に読みやすいには読みやすいが、水戸的怨み魔太郎史観で書かれているので香ばしい所もあるので注意。それでも水戸内戦の原因とその過程、そしてイデオロギー派閥による複雑さと、ゲバルトの凄まじさが分かりやすく書かれている。それにしては水戸内戦の殺戮は本当に言語を絶する!水戸人同士でイデオロギーの違いから凄まじい近親憎悪と化した虐殺が如何に多かったか。そして明治時代初期にまで大量殺戮が行われた結果、流星の如く水戸藩が滅びたというのはあまりにも惨めである。人材払拭と極左的な尊皇攘夷イデオロギーにより、明治初期まで時計の存在を知らない水戸人の警察官がいたそうである。(時計は夷狄のカラクリとかでってオマエラは漫画のザ・サムライか!)

幕府による藤田小四郎らの大量処刑が、実は長州藩を『窮鼠』にしてしまい、これが会津戦争の遠因となっているというのは意外と知られていない。また天狗党処刑を行った田沼意尊の末裔が落ちぶれてしまったという因果な話もある。

☆☆☆
絶版!
上村健二
善本社
25 時代の精神
近代イギリス超人物批評
2月12日 近代イギリスを代表する人物批評。今でも著名なワーズワーズ、パイロンなど19世紀初頭を代表する人物をメッタ斬り!辛口評価についてオブラートに包んで猛毒で書かれたり、また時には知人であろうと批判は批判と叩きまくる姿勢はなかなかのもの。
過激な批判が目立つが、歯に衣着せぬ姿勢と、叛骨的な姿勢はなかなかのサイキッカーぶりを発揮している。
人物批評の一つのスタイルを築いたとも言われている。

☆☆☆
★★
W.ヘイズリット
William Hazlitt
神吉三郎 訳
講談社学術文庫 1213
26 信長と天皇
中世的権威に挑む覇王
2月17日 信長の野望は天皇を超越しようとしていたのか?
信長が勤王であるという平泉澄や田中義成の説を否定し、正親町天皇と信長を軸として天皇の権威を利用しつつ、正親町天皇の政治力に悪戦苦闘する信長という姿を浮き彫りにしている。

当時の最高権威である帝を利用しつつ、信長自身が帝の上に政治的に立とうとするが、正親町天皇自身が信長以上にしたたか者であり、中世的権威の破壊者たる信長も、皇室の権威まで奪えなかったというのは注目すべき。
信長が自らを神格化しようとしたソウ
(変換できず)見寺も、畿内ではソッポを向かれてしまい天皇に変わる権威が持てなかった事。また本能寺の変の際も正親町天皇は少しも慌てず(京都政変は天皇から見れば日常茶飯事であろう)明智光秀にアポイントをとるなど戦乱を生きる天皇の政治的手腕はなかなかおもしろい!

☆☆☆☆
お勧め!
今谷明
講談社現代新書
27 西力東漸本末 2月13日 マルコ・ポーロの時代よりペリー来航まで、アジアが西洋の力(軍事・宗教・文化)に浸透されていく課程を描いた本。西力とは西洋を、東漸とは文明や勢力が次第に東方に移り進むことを現す。
歴史本というより歴史哲学と言った方がいい本であるかもしれない。戦前、太平洋戦争開戦前に作られており、当時の情勢などが背景にあるところは否めない。
作品は軍事的西力(スペイン・ポルトガルの植民地奪取)と文化的西力(キリスト教の伝達)による東漸、それに伴う日本人の海外雄飛は『東力西漸』であったかもしれないが、鎖国に至る経過は『西力東漸』の影響であることは明白であろう。蘭学などの東漸(杉田玄白)はどちらかというとポジティブな『東漸』とも言えるかも知れないし、や林子平による海国兵談も西力東漸の警笛とも言える。そして、アヘン戦争とペリー来航こそ
『西力東漸』を文字通りに現しているだろう。日本的視点だけでなく、世界史の一環として眺めると、如何に日本が諸外国の影響を受けてきたのかかを考えさせられます。

分厚い本の上、戦前の旧字体だから読むのに一週間かかりました。

☆☆☆☆
お勧め!だが
絶版!
中川清次郎
大東選書 (四)
28 幕末・会津藩士銘々伝  2月18日 幕末に活躍した会津藩士を描いた本。上巻は22名の会津藩士、又は関連の人物が描かれている。この中で個鴉が気になった人物は
秋月悌次郎、日向内記、大庭恭平、大山捨松、野口富蔵など。特に大庭恭平が関わったとされる足利将軍木造事件について、大庭自身の意志で起こした事件であったは注目すべき。
興を削いでしまったのが、帯に書かれている「会津魂を貫いた悲劇の生涯」、新人物往来社得意の会津万歳的表現はなんとかしてくれ。更にはライターによって論文として耐えられるものもあれば、「なんじゃこりゃ!」と文章がこなれていない物もあった。誤植ぐらい直しておきなされ。


小桧山氏のあとがきについては会津という狭い了見でしか眺めない会津研究家のお馴染みの文言が書かれており、鴉としては失笑せざるおえない。(それとも会津の恨みを全面に出して書いてくれと注文されたのか?)
本来は明治維新史となんら関わりの無い駄文(戦死者埋葬されない→これが銘々伝下巻で疑問点を投げかけている。靖国の件→新政府軍戦死者を祭る神社であるのに会津藩の死者が祭られていないという理論矛盾した点)など書かれても
それがどうしたの?あんたは歴史に何を求めているの?としか言えない。
歴史ファン同士で深い相克を作ってしまい、逆にアンチ会津を増やした会津研究家の罪は重いとオイラは考えるがね!

☆☆
小桧山六郎・間島勲 編
新人物往来社
29 江戸の風刺画 2月19日 幕府政治に対する風刺画を紹介したユニークな本。サイキック度高し!

時には風刺の内容が御政道批判と言う事で厳しい弾圧を受け、また自分の意図と違う方向に作品が解釈されて弾圧されたという間抜けな話もあったそうで(苦笑

風刺が一番おもしろかったのが水野忠邦の天保改革の時で、また筆禍も天保期に多いと言うのも特徴だそうです。たしかに水野忠邦をパロった戯画はヒッデーの一言ざます。そして弾圧の原因として御政道批判だけでなく、戯画に書かれた家紋が「俺の家の家紋をよくも使ったなあ!絶対にブチコロシマス!」と大名家から介入されたというのも理由の一つだそうです。

時代の新旧に変わりなくパロディーや風刺の精神は新聞の一コマ漫画(政治批評)と大差ないように思えます。

☆☆☆☆
お勧め!
南和男
吉川弘文館
歴史文化ライブラリー22
30 水戸藩・戊辰の戦跡をゆく 2月20日 戊辰戦争に於ける茨城県(水戸藩)内の戦跡を大政奉還から明治維新終結まで描いた本。怨み魔太郎的見識が香ってくるが、水戸の人から眺めた戊辰戦争と言う事でこれもまた読む価値はある本。
水戸については筑波戦争以来、内戦状態が続きいて最早収拾が付かなくなっている所に戊辰戦争が始まって更に収拾が付かなくなってカオスとなった所に、更に旧天狗党とも言うべき連中が舞い戻ってきたから最早ドロヌマ化。但し水戸諸生党も天狗党についても両方の視点で眺めている所は好感が持てる。諸生党が新潟だけではなく佐渡まで渡っていたのはこの本で始めて知りました。

また守山藩が如何にして戊辰の戦乱と本藩の抗争に巻き込まれない様に動いたのかが書かれており、奥羽越列藩同盟に対しても三春藩同様に「生き残る為に」マキャベルズムを駆使して政治抗争を戦い抜いたのか。なかなかおもしろい本でした。
☆☆☆
鈴木茂乃夫
暁印書館
31 増補 幕末百話 2月21日 幕末の古老から聞き書きした話を編集した本。
幕末期江戸時代の間抜けな話から始り辻斬り、ちょんまげ、旗本サンピン、黒船に纏わる話、安政の大地震など当事者達が話すだけに滑稽で面白く、また権力者が証言者として出でこず、全て市井の市民と言う所にこの本の特色がある。庶民の証言だけになかなかサイキック度濃し!
また増補版として「今戸の寮」が掲載されており、明治時代当時の風俗が書かれておりこちらも内容は貴重な証言である。

当事者の生の発言ばかりだけに、また権力者に阿る事も無い故に、一次史料としても貴重な本。

☆☆☆☆☆
チョーお勧め!
★★★★★
篠田鉱造
岩波書店 青469-1
32 アラブが見た十字軍 2月23日 現在でも相克として影響が在る十字軍遠征について、アラブ人の視点から見た歴史本。故に十字軍とは一切書いておらず「フランク人の遠征・侵略」と書かれているのがミソでしょう。
11世紀から13世紀まで約200年もの間に行われたフランク人の軍事遠征(十字軍)が起こしたイスラム教徒諸国との対立の実相はどうであったのか?読んでみるとイスラム諸国の政治的な不統一と権力者同士の御家騒動がフランク人(十字軍)の侵略に対して隙を与えてしまっている事。フランク人による地中海沿岸諸村に対する大量虐殺(捕虜を食用にしてしまったなどカニバリズムの凄まじさ)が書かれており、これらがキリスト教国に対する根強い怨み魔太郎的な問題を起こしてしまった事。またイスラム諸国同士がフランク人の遠征を政治的に利用して自己陣営の権限強化に利用したり、またフランク遠征軍と協同で自己反対陣営に対して攻撃を加えるなど、イスラムのスルタンやカリフ達の権力争いを問題として指摘している。

現在まで続く中東のカオスの原因でもある十字軍遠征について、個鴉も実はキリスト教諸国側の視点でしか見ていなかったのが、この本を読んで痛感させられたのと同時に、アラブの怨みと一緒くたにして考える大たわけな作家(地方史研究家)に改めて無理矢理にでも読ませたい本ではありまする。
比喩としてあまりにも不適当である事に気が付けよヴォケ!

☆☆☆☆☆

チョーお勧め!
アミン・マアルーフ
Amin Maalouf
牟田口義郎
・新川雅子 訳
ちくま学芸文庫 マ18
33 イデオロギー
政治の世界@
2月25日 イデオロギーとは何か?そもそもイデオロギーの定義とは何であるかを考察した本。イデオロギーという言葉を捕らえ直すというのが趣旨らしいのだが、読んでいて訳が分からなくなってきた(けひょ

これは個鴉の考えだけど「xxが正しい!○○こそ悪!」という捉え方こそイデオロギーであるはずだが、叫んでいる面々が気が付いていないという所がコッケイであるわなあ(毒笑

ジョン・プラムナッツ
John Plamenatz
田中治男 訳
福村出版
34 幕末・会津藩士銘々伝  3月1日 先に紹介した銘々伝の下巻。会津藩関係者21名を紹介。
こちらでは西郷頼母、外島機兵衛、伴百悦、広沢安任、山本覚馬、横山主税が注目!伴の所で会津の主張する戦死者埋葬の件で注目すべき論文が書かれている。また畑敬之助氏が勝海舟について
「会津的倫理観では割り切れない部分があるが」と書かれているが、オイラはこの会津的倫理観を全国区に持ってきたことに対して大問題だと思うけどなあ。それを皮肉っている畑氏が一番キッツイねえ(苦笑)
横山は次の会津どころか日本を担う人物と思っていたから白河城での戦死は本当に残念であるし、また山川大蔵の斗南移転は会津藩政痛恨の大失敗であるとオイラも考える。しかしだがねえ〜、武士階級は会津だけでなく各地で崩壊した訳だし、『北の零年』ではないが更に過酷な地域に移住させられた侍もいたのに。

そろそろ責任転嫁論も止めることですな。読む本を読んでいる歴史ファンはもう付いてこないと思うよ、某郡山在住の作家さん(毒笑
なにせ上下巻共にその作家さんの名前がでてこなかったもんねえ〜。

☆☆☆☆
お勧め!
小桧山六郎・間島勲 編
新人物往来社
35 薩摩の秘剣
野太刀自顕流
3月2日 南海の蛮族シマンズの核兵器『自現流』とは別のスーパーウェポン『自顕流』こと野太刀自顕流の歴史、技、真髄を語る本。
幕末、薩摩の下級武士が取得した『野太刀自顕流』の破壊力と、なぜ彼らが明治維新の主流となり得たのか?また作者が自顕流を習う切っ掛けとなった経緯や、自顕流の極意(但し、秘伝は口伝のみとしか書かれていない。)そして島津氏本人は、南海の蛮族の教育システム“郷中教育”の復活を行おうと努力されているとの事です。

オイラは自顕流の極意を学ぶ為に【天吹】【薩摩琵琶】を習った上で、薩摩の精神性だけでなく加治木町の自負というものまで考えている事にすっげーという月並みの言葉に加えて、自顕流について免許皆伝というものが存在せずに修行は継続という姿勢に改めて敬服せざるをえません。そして、なんといっても『議を言うな!』という薩摩気質と本来は非公開が原則である自顕流(剣法は本来は非公開が原則)を本として発表して、郷中教育と共に自顕流について広く世間に理解を求めようとする姿勢について共鳴する次第です。

自顕流を現す言葉として

『地軸の底まで叩き斬れ!』

は的を得ている!恐るべし自顕流!

☆☆☆☆☆
チョーお勧め!
島津義秀
新潮新書104
36 砲術家の生活(増補) 3月3日 日本の火器発展を火砲史と砲術家について取り混ぜながら書かれた本。火砲運用の発達史としては面白く書かれている。

鉄砲の技術発展から、その中でも鉄砲技術を先鋭化しようとした砲術家の逸話。おもしろかったのが上杉鷹山が藩主就任時に起きた鉄砲上覧騒動や、大塩平八郎の乱の逸話など。幕末関連だと河井継之助とガットリング砲や二本松藩木村銃太郎の小伝しかなかったのがちょっち不満。
なお、巻末に当時の兵学書である「遠西武器図略」「西洋兵学訓蒙」が併催されています。

☆☆☆☆
お勧め!
安斎 實
雄山閣 生活史叢書18
PDF版
37 幕末の長州
維新志士出現の背景
3月4日 維新変革に於いてなぜ長州藩より大量の討幕の志士が出現したのか。雄藩の道を辿り、討幕の礎となったその課程を吉田松陰や高杉晋作、そして天保大一揆の名もない百姓達の動き、そして維新達成時の長州藩のその後が簡単に書かれている。歴史観的には明治維新達成後の長州を始めとする西南雄藩の藩士や維新の志士に対して覚めた目で見ており、維新革命の結末に厳しい視点を送っている。

著書は1965年に発刊されており、当時の明治100周年記念に対するアンチ・テーゼ的に書かれている故にネガティブな視点となっているが、山口出身で長年山口県内の調査をしてきた著者だけに、維新英雄史観に対して批判を行っている。

イデオロギー臭い所も在るが、それらを差し引いて読むと長州藩の維新変革までの課程について分かりやすい。
実は間抜けな話しながら、個鴉は以外や以外、長州関連の本をあまり読まなかったりするのである。(むしろ佐幕系の本が多かったりする)

☆☆☆☆
お勧め!
田中 彰
中公新書 86
38 廃藩置県
「明治国家」が生まれた日
 3月5日 明治維新の革命の一つとされている「廃藩置県」について、中央集権国家として生まれ変わる課程に於ける激動の舞台裏について描かれている。

藩が消えた日
王政復古の大号令
「土地人民返上」を申し出た藩主たち
西南諸藩の反発
混迷する政府改革
外国人から見た廃藩置県
明治集権システムの成立
で構成。

藩が消えてしまうまでの課程で、維新を起こした藩(山口、鹿児島)などの反発や、最早藩として経済的に成り立たない藩など、それぞれの思惑や明治新政府としての権力行使を行う為の試金石として、そして廃藩置県でなぜ反乱が勃発しなかったなど、明治維新の問題でもあった中央集権化の促進と、廃藩により今まで特権階級であった武士もこれにより全て滅びることとなる切っ掛けとなった改革。
明治新政府の改革でも過激な改革とまで言われているが、廃藩置県達成により、維新変革が達成されたとまで言われており、その後の三大改革(学制・徴兵制・地租改正)が可能となった事を考えると、廃藩置県の大きな意味が理解できるであろうし、実際に廃藩置県後に明治変革のスピードは驚異的に速まる事となる。
本書でおもしろい部分が「県名の起原」であり、「勝者に都合よく県名がつけられている」という説(宮武骸骨の『府藩県政史』が最初だと言われているそうな)についておもしろい事が書かれているので必見。

☆☆☆☆☆
チョーお勧め!
勝田政治
講談社選書メチエ 188
39 幕末の長崎
-長崎代官の記録-
3月6日 幕末期に於ける長崎奉行の司法・行政の悪戦苦闘記録。
ドラマでは長崎奉行の特権で莫大な富が得られると描かれているが、幕末の長崎奉行は対外交交渉や、港湾警備、支配地域との摩擦、キリシタン摘発、外国人との折衝など、文政末年から慶応元年までの古記録「御用留」を元に長崎奉行と代官は神経衰弱もの!

特に長崎在住の百姓や漁民達が、幕末政治の混乱に巻き込まれる課程が酷いものである。(別段、長崎地域に限った事ではないが)土地収用問題、キリシタン問題や地域開発問題など収拾不可能!嗚呼、悲しき中間管理職の悲哀長崎奉行の苦労は結果的に幕末のカオスと共に明治維新でふっとぶのであった。

☆☆☆☆
お勧め!だが
絶版!
森永種夫
岩波新書 588
40 徳川慶喜
幕末維新の個性 1
3月7日 最後の将軍、徳川慶喜が目指した維新変革のプランとは?
徳川慶喜が理想とした政権とは、フランス式絶対王政であるという定説についてちゃぶ台をひっくり返すが如く家近氏は否定。徳川慶喜が大政奉還を行った本当の理由を家近センセが一つ一つ慶喜の性格や行動形式から解明しようとするもの。
慶喜は研究者から感情論で語られることが多く、佐幕贔屓の作家からは物凄く評判が悪い。徳川慶喜公伝や昔夢会筆記を読んだ上での批評は兎も角、小説を読んでの慶喜批評(もしくは罵倒)はどうかね。作家も司馬遼太郎を含め、慶喜に対する批判が
トンデモ化しつつあるような気がするね。

家近センセは一会桑政権を世に問うただけに、会津側、反幕府側、中立側の史料を駆使し、その上で慶喜の行動について批判されているので説得力がある。
特に家近センセの説で「慶喜は絶対王政を目指したのではなく、朝廷と諸藩との協調路線を目指したのだというのは傾聴に値する説だと考える。その上で慶喜が政策的に会津を斬って捨てたのが不味いと批判するに至ってはオイラも納得。

この本を作るに当って参考資料だけでもマイクロ本を含め73種類の史料を読んだ上で精読しての本という事を考えると、慶喜を調べるというのが如何に手間が掛かると言うか。
なお、百人組手20-「その後の慶喜 大正時代まで生きた将軍」を併読すると、幕末の慶喜が益々面白くなることでしょう。

☆☆☆☆☆☆
超絶お勧め!
家近 良樹
吉川弘文館
41 弘前藩 3月9日 戦国南部氏から独立して津軽を支配した弘前藩の成立から廃藩までを描く本。

本州北部を支配した弘前藩領で起きた様々な事件や人、文化などエピソードが満載。津軽氏が弘前を支配する課程から、多発する飢饉と蝦夷警備の問題、弘前独自の文化(ねぶた祭り)や青森市のルーツなどがおもしろい。
特に幕末期の民衆の動乱や、戊辰戦争に於ける対盛岡戦の敗北がやむにやまれなかった事。そして函館戦争の参戦や、その後の経済窮乏により廃藩置県にならざるおえなかった事など幕末期の状況を知る上でも大いに参考になった本です。

個鴉がおもしろい!と思ったのが御家騒動の下りや、中興の祖とも言える津軽信政の明暗でした。

☆☆☆☆
お勧め!
長谷川成一
吉川弘文館 日本歴史叢書63
42 吉田松陰
身はたとひ武蔵の野辺に
3月10日 吉田松陰評伝ながら、古川センセのように吉田松陰に対してやおいー的提灯記事ではなく、人間吉田松陰の問題点である偏狭な部分や常軌を逸した狂気性などを含め、松蔭の行動と教育を評する本。

松蔭センセのムチャクチャな所は、江幡五郎や宮部鼎蔵との東北旅行を『脱藩をしてまで』行動をとる所や、ペリー来航時に『アメリカに行くのだああああ』と嬉しそうに船を漕いで追い返されて野山獄に閉じ込められたり、そこで囚人を教育するなど驚きの連続である。本当に破天荒で常識破りの行動が多すぎ!だからこそ維新回天の導火線になり得たのであろうが。

特に松下村塾の教育方法など、作者は現代でも見習わせる部分があると書いているが、松蔭センセの『変な部分』を除けば同意。「教える自由と学ぶ自由が本当に保障された教育の場である松下村塾が、現代の学校社会における数々の病理現象-いじめ、校内暴力、学校嫌い、登校拒否、不登校、今流行の学校崩壊など殆どお手上げ状態の我々に語りかけるものは極めて多く、また限りなく示唆的である」と書かれていることについては、考えさせられる。

松蔭センセの最後(安政大獄による処刑)について、松蔭センセは処刑場に呼ばれる時はパニックを起こしていた(吉田松陰萌えの方々は否定しているそうである)が、死の直前は微動だにしなかったという事で評価を貶めるのではなく、人間吉田松陰として魅力を引き立てるのであるというのは納得でした。

☆☆☆☆☆
チョーお勧め!
海原徹
ミネルヴァ書房
ミネルヴァ日本人物評伝
43 ペリーの対日交渉記 3月11日 嘉永六年のペリー艦隊と日本との外交交渉を、解説を着けながら対外交渉(むしろ対米交渉とも言える)のノウハウを書いた所謂サラリーマン読本。
岩波書店の「ペルリ提督日本遠征記」や日本遠征記の元本から抜粋したもの。
概要については分かりやすく纏められているが、なにせサラリーマン教訓本故に、教本的な書き方や、考現学的内容が多すぎ、筆者の自慢話などが書かれており、あまり面白みがない。

これを読むのなら岩波の「ペルリ提督日本遠征記」(旧字体で書かれているので読みずらい。藤田氏も指摘しているが)を読んだ方がマシとも言える。

-★★
お勧めしません
藤田忠
日本能率協会
マネージメントセンター
44 頼 三樹三郎 3月12日 熱血の詩人、頼三樹三郎の半生を頼山陽研究家でもある安藤センセが描く。

頼三樹三郎については以外や以外にも詳しく、かつ安易な本があまり見かけない。新人物の伝記シリーズはこういった知られていない人物の伝記が多く、大川周明や北一輝、頭山満まであったぐらいである。(今の新人物は記事を歴史家に欠かせないでマイナーな小説家に書かせているから面白みがないし、新選組特集ばかりで読む気にもならない。)

頼三樹三郎はオヤジの頼山陽に似てやんちゃな所もあるが、熱血な所もこれまたオヤジに似てしまったのか、安政大獄により刑場の露と消えるのだが、一介の詩人である頼を処刑してまで政局を収拾したかった幕府の状況は末期的ともいえるであろうが。と同時に安藤センセの井伊直弼批評がなんとなく香ばしい(笑。いや、気持ちはわからんでもないけどさあ。
頼三樹三郎の漢詩(安藤氏訳)も掲載されております。絶版なのが残念!

☆☆☆☆☆
チョーお勧め!
だが絶版!
安藤英男
新人物往来社
45 竹内 好
「日本のアジア主義」
精読
 3月14日 竹内 好 著 の「日本のアジア主義」を松本健一氏が解説。

古書百人組手10で紹介したが、元々中国文学家であった竹内センセが、そのグローバルな視点で戦前日本の「アジア主義」で“国粋的な物の味方についてはバッサリと斬りすて”批判しつつ、視野を広めたアジア主義について考察した本であったが、松本センセがその中で難解であった「アジア主義」の部分を開設。

ナショナリズムについて、北一輝や岡倉天心、孫文の講演会の内容(御都合よく改竄した部分など)交えながら「アジア主義」をもう一度考える。戦前のナショナリズムが果たした役割と、それらを矮小に考えるか、もう少しグローバルに考える必要があるのでは?
イデオロギーに拘らず、もう少し考える必要があると思うざますよん。

☆☆☆
松本健一
岩波現代文庫 学術14
46 ええじゃないか 3月15日 維新変革に起きた民衆運動「ええじゃないか」を、各地の史料を集めて集積し、「ええじゃないか」を考える本。

「ええじゃないか」について実は北限が関東である事(北関東以北はあまり起きていない)や、「ええじゃないか」という言葉をとっても地域によって叫び方が違うという事など、地域によっても発生の仕方がちがう「ええじゃないか」を考えるとこれがなかなかおもしろい!天から降ってきたのは「お札」ばかりではなく、中には「生首」が振ってきたなどと物騒な話もある。会津・東北方面で「ええじゃないか」が発生していないのは考察に値すると鴉は考える。
維新の志士が「謀略」で煽ったという話もあるが、地元の神社が煽ったとの逸話もあり、政治謀略だけではなく、「お伊勢参り」のような庶民のエネルギッシュな運動の側面も持っているようである。新書ながらユニークな本。

☆☆☆☆
お勧め!
高木俊輔
教育者歴史新書93
47 街道の歴史54
薩摩と出水街道
3月17日 ふるさとの歴史を街道周辺から見つめようとする吉川弘文館の好企画本。

鹿児島を中心に出水(いずみ)街道を中核とした薩摩の歴史を俯瞰する。南海の蛮族シマンズこと古代隼人から島津氏の薩摩支配から戦国薩摩の活躍。外城制による薩摩支配、「蛮族」と揶揄される士風、西郷や大久保など維新の英傑を幾多も出した幕末の薩摩の背景、西南戦争を経て第二次大戦では特攻隊の最前線基地となった知覧、薩摩のシンボルともいえる桜島、薩英戦争の戦場となった鹿児島湾、そして独特の薩摩の文化、最南端故に
西力東漸の前哨とも言えるフランシスコ・ザビエルの来航など、地域の歴史・文化を分かりやすく書かれている。

その地域の地元史家や先生が書かれているものの、ベタホメ萌え的ではなく、また史学的に難しく書かれているわけでもない、ある意味司馬遼太郎の「街道が行く」よりもおもしろい本です。

☆☆☆☆
お勧め!
三木 靖
向山 勝貞 [編]
吉川弘文館
48 横須賀製鉄所の人びと
-花開くフランス文化-
3月19日 幕末に小栗上野介が作ったという『横須賀製鉄所(造船所)』を巡る幕府とフランスの史談。

製鉄所の設計者であり、首長であるヴェルニーの物語り、そしてヴェルニーが製鉄所の管理・教育人員として送り込んだフランス人により、新たな文化交流が起こり、そして人材育成機関として作った学校から、幕府や小栗などのキャリア達が当所の目的を超えて、新時代の為に如何に貢献したのかが書かれている。

横須賀ドックというと最近はドラマや漫画でも「小栗上野介」が出てくるが、小栗だけではなく造船所の通訳や、造船所内の学校で教育された伝習生がその後に幕府の外交通訳として活躍したり、維新変革後にも教育者、企業家、技師など人材を育成した組織としても見落としができないという点であろう。

☆☆☆☆
お勧め!
富田 仁 西堀 昭
〈監修〉高橋 邦太郎
有燐新書 25
49 朱子学と陽明学 3月21日 中国哲学『朱子学』と『陽明学』の哲学の歴史と解説。かなり難解で頭がウニクラゲになりそうでありんした(ハア

特に陽明学については「狂の意識」という話があって「狂者は進ミテ取り」など物騒で過激な意味の文言が多く、また学問を活用させる思考などは、日本の大塩平八郎や山田方谷、河井継之助が影響を受けるだけあるなあと関心はしましたが、なにしろ哲学は難しいざます(大汗

☆☆☆
島田 虔次
岩波新書 637
50 戦争論  3月22日 『戦争とは一種の強力行為であり、その旨とするところは相手に我方の意志を強要するにある。』
戦争という行為を哲学的に考察した本であり、その思想はまもなく200年になろうとしている今日でもその影響力が行使されている所に恐ろしさを感じる本でもある。先の一説などは、現代の対テロ戦争ですら影響を受けているといっても過言ではない。冷戦化のアメリカとソビエトこそが『相手に我方の意志を強要』させていたのであり、明治維新の最終段階である戊辰戦役こそ『戦争は政治的手段とは異なる手段をもって継続される政治にほかならない』行為である。

その哲学は東洋の『孫子』の思想に匹敵。あまりにも有名であるが、これが超絶難解な本!クラウゼヴィッツが草稿を整理する前に死去した為に、奥さんが編纂した為にあちこちで“ほころび”がでており、また訳者がどうも軍事を理解できていなかった為に益々難解にさせてしまった。
誰か決定稿を考察して“戦争論完全版”を作ってくれないかなあ(嘆息

岩波版第一巻は戦争と何かという有名な命題から始まっている。難解な本ではあるが、戦争を蛮行と唾棄するだけではなく、現在こそ読んで考える必要があると思う。

☆☆☆☆
お勧め!
クラウゼヴィッツ
Kari von Clausewitz
篠田 英雄 訳
岩波文庫 白115-1
書籍名・出版社 日 付 感 想 写真・評価
51 日本史研究叢書3
幕末政治思想史研究
3月25日 幕末に起きた政治運動を再考察した本。昭和四十三年に発刊当時の幕末史に於ける“常識”について一考を与えた部分も持っている。

序章 福井藩藩政改革の展望
第一章 将軍継嗣運動と集権的国家の構想
第二章 いわゆる尊王思想の再吟味
第三章 幕末政治史の一視点

で構成。


尊攘運動については会沢正志斉のその後(安政大獄から慶応までの状況)や、井伊大老による違勅問題の再吟味など、特に将軍継嗣問題から安政大獄までのプロセスなど現在でも問題となる事件を考察している。
現在では、違勅問題が井伊大老失脚を狙った一橋派の策動という定説が、当時(昭和30〜40年代)王政復古史観では違勅そのものが問題視されるなど、時代が変化すると説も変化するのだなと改めて考える次第でした。

☆☆☆

絶版!
山口 宗之
隣人社
52 服部之総全集16
近代日本のなりたち
3月27日 歴史家、服部之総氏の歴史論・エッセイ集の第16巻。

「近代日本のなりたち」では、封建制度の中でマニファクチャー(家内制手工業)から封建的経済構成体から資本主義的社会経済構成へと移行する課程で、支配階級による搾取と身分の分解が進んでいく状況と、それに伴う階級闘争が書かれている。と書いたけど(合っているかなあ〜)

庄内藩の国替え反対運動も、黒幕に本間家が庄内藩の債権問題が絡んでいるなど経済から見た幕末史(つか、マルクス史観から見た幕末史ざますねん)といった視点で論じられていたが、時には「服部センセそれは考えすぎです」といったような論文もあったり、今では百姓でもあった田中圭一氏によって貧農史観が真っ向から否定されている現在で読んで見ると「なんだかなあ〜」という部分も多々ありんす。それはそれ、これはこれ。
イデオロギーに拘る必要がない今でこそ、服部御大の論文を読み直すのも必要ではないでしょうか?

☆☆☆☆

お勧め!だが絶版!
服部之総
福村出版
53 龍馬と新選組
〈文〉で読む幕末
3月30日 坂本龍馬の書簡と御陵衛士・伊東甲子太郎の詩「残しおく言の葉草」より幕末の思想、思考を読み取る。

坂本龍馬の書簡では、姉乙女に当てた手紙や、兄宛ての手紙より竜馬のユニークな性格や龍馬の詩から彼の几帳面な性格を読みとる。姉乙女や兄に対する無心が面白いが、逆に志士と言われた面々が“パトロン”から資金援助を受けて活動を行っていたんだなっと変な関心をしてみたり。

伊東甲子太郎は新選組唯一の“インテリ”だが、彼の持つ『大開国・大攘夷』はもう一度考える必要がある。思想的に相容れられなくては近藤らに謀殺されるだろうが、従来の新選組研究家が敵対主義による伊東批判により、きちんと研究がなされていないのはオイラも問題がある。管氏は近藤書簡集すら纏められず、敵対主義的研究しか行えない新選組研究家を痛烈に批判。幕末研究家は会津史上主義者もそうだが、高杉革命史観の狂信者も含め、どうも敵対主義的研究(或いは妄想か)が多すぎ!

更に管氏の話だと、以前土方関連の本
(俳遊の人 土方歳三 句と詩歌が語る新選組古書ヲタ与太話18参照)でたわけ者より「頭の悪いヒステリックな罵倒」いやいや「腐った頭を駆使したヲナニー言葉」ああ間違い「自己満足の為のバカな腐女子のバイブ挿入あへあへ言葉!」あっれえ〜これでも毒が薄いかなあ(ケケ。
そういった腐女子の抗議を戴いたそうです。曰く「俳遊の人とは失礼よ!」だってさ。因みに俳遊とはアマチュア俳人の事だそうで、それについて匿名で電話で抗議!「それは無礼だ!」と管氏がたしなめたら逆切れ(プ。匿名で抗議したのは手前の名前が晒されるのが怖いからだろってアホかね、抗議された女流作家さん(匿名で抗議しても、バレちゃったみたいね)。
新選組ファンならずとも、こほんな抗議をすれば厭になるな。

☆☆☆☆
お勧め!
管 宗次
講談社選書メチエ309
54 維新風雲回顧録 3月30日 土佐の志士、田中光顕による土佐藩士達の幕末での活躍を描いた本。

坂本龍馬、中岡慎太郎らの草莽の志士達の活動や、武市瑞山の栄光とその最後、維新回天の初動ともなった大和天誅組の乱や、戦死した叔父那須信吾の談話など、時には講談風に、また時には小説的に書かれている。

自分も草莽の志士として活動していた故に、秘話なども書かれているが、当事者だけにどこまで信じていいのかという疑念もあるが、史料批判ができれば問題なしざましょう。大和天誅組の乱については、当事者の身内だけに迫力のある場面がある。岡田以蔵については武田「金八」が「おーい!龍馬!」で綺麗に書きすぎて、へーんなイメージができちゃたような。

田中が土佐勤王党を顕彰するつもりで書いているので、差し引く箇所はあるにはある(皇后の枕元に坂本龍馬が立っていたという』)話などなんだコリャ的話もあるが、司馬遼太郎の語る『三流志士』という言葉にも惑わされないように。(所詮は面白おかしく書きたがる作家の言質だからして)

絶版なのが残念!

☆☆☆☆☆
チョーお勧め
田中光顕
大和書房
55 新選組全史 戊辰・函館編 4月2日 新選組の活動を、戊辰戦争勃発から函館の終焉まで描く本。

内ゲバによって新選組そのものが衰亡していき、最後に自滅するまでが描かれているが、奈良本辰也氏ならずとも「あだ花」だなあと思えるね。それらをなんとか『ヒーロー』にしようとするからなんだかおかしな状況になるような。

新選組はそれほど万能ではないのに、どうしてスーパーマンにしたがるのであろうか?
余談だけどさりげなく手前の小説の宣伝をちりばめるなど、中村センセもおちゃっぴいざますなあ。

☆☆
中村彰彦
角川文庫
56
戦争論  4月3日 クラウゼヴィッツの戦争哲学中巻。
上巻は戦争哲学編であったが、中巻は戦術論を纏めている。戦闘、戦闘力、防禦を解説。17世紀〜19世紀初頭までの戦術論である故に、時代にそぐわない記述もあるにはあるが、基幹のなる“思想”は現代とは対して変わらない。

クラウゼヴィッツの面白い所は、どうもパルチザンについてあまり宜しく書かれていない。『防禦者と国民とあいだに必ず生じるところの極く一般的な発して、次に国民が進んで戦争に参加し始めるという特殊な場合に達し、ついに
スペインにおけるように(スペイン地域に於けるパルチザンを現す。)、国民を挙げて闘争を遂行するというすさまじい段階に達するならば、これはもはや国民の強力な支援などというものではなくて、まったく新奇な勢力の発生と言わざるを得ない。(戦争論中巻 第六章 防御手段の規模より)』
ゲリラ戦についてはどうも『新奇な勢力』として表現しており、クラウゼヴィッツ自身はどうも非正規戦は苦手なようざます。
余談ながら、大村益次郎がクラウゼヴィッツを知っているか知らないかという論争をしましたが、軍事史学150号で「うんにゃ、大村益次郎は名前は知っているよ〜ん」と書かれていました。但し、大村センセ自身がクラウゼヴィッツの戦争哲学を理解していたかどうかは不明だそうですが、この中巻の戦術論はマスターしていたみたいです。もっとも、大村センセは正規戦ではなく、パルチザンを中核とした非正規戦を基幹戦術としていたみたいですが。

☆☆☆☆
お勧め!
クラウゼヴィッツ
Kari von Clausewitz
篠田 英雄 訳
岩波文庫 115-2
57
歴史とは何ぞや 4月4日 ドイツ歴史学者ベルンハイムの歴史論を簡略したものだが、歴史哲学を論じるよりも史学研究の方法にスペースを置いている。特に膨大な史料文献を中心に解説を行っており、改めて史料批判の大切さと、歴史についての認識について厳しく書かれている。
「史学は、共同体をなす存在としていろいろ活動する人間の空間的時間的発展の諸事実を、その時々の共同体から見た価値に関係さした心理的物理的な因果関係について究明しかつ叙述する科学である(p74より)」
至言ざますなあ。って難しい言い回しざますが(大汗

この本は、歴史哲学については前半のみで、残りは史学の実践について書かれているのみで、歴史哲学書というよりも史学研究論といった本でしょうが、我ら日本史学徒に対しての探求論(ぶっちゃけて言えば斜め読み論)と読んでみても差支えはないはずです。

☆☆☆
ベルンハイム
Dr.E.Bernheim
坂口 昴 小野 鉄二 訳
岩波文庫 414-1
58
英国外交官の見た幕末日本 4月6日 ラザフォード・オールコック、ハリー・パークスの視点から見た幕末維新の変革期を描いた本。
彼ら二人の書簡(外交文書)から、大英帝国が日本に対して何を求めたのか?又、彼らの外交交渉を読み取ることにより、幕府の対英交渉と薩長との交渉との相違点と、幕府の衰亡の一因でもある対外外交の失政、当時の日本が資本主義の嵐に揉まれながらも、当時の船頭たち(幕府外交キャリア、新政府外交担当者達)の努力、そしてなぜかパークスの強烈な性格の陰に隠れてしまっているが、オールコックの外交手腕の評価などが書かれています。

☆☆☆☆
お勧め!
飯田 鼎
吉川弘文館
59 井上清史論集 2
自由民権
4月8日 井上清センセによる幕末〜近代史論第二弾。

★ 自由民権運動
★ 日本における民族主義の歴史と伝統
★ 自由民権運動をめぐる歴史的評価について
★ 日本人のフランス革命観-自由民権運動期を中心に
★ 兆民と自由民権運動
★ 土佐の自由民権運動と民衆

今回は国会開設と自由民権運動について論じている。但し、イデオロギー臭が強すぎて、現在の視点から見るとときたま苦笑できる部分が出てくる。やたら『革命』よいう言葉が出てくるが、明治維新は『革命』だとオイラも認めるが、井上センセの言われるような革命であったかどうかは疑問。どうもフランス革命史観とちゃんぽんになりすぎているような・・・・・そこまで庶民が政治に目覚めているとは思えないざますよん。

但し、今回の論集で述べられている「国会開設と自由民権運動」の評価は考えるべき。幕末ファンはどうしても明治維新で終了的な考えだが、本来“歴史は過去から現在まで繋がっている”のであって、幕末に於ける武士階級崩壊の因果関係を考えるならば、個鴉はその後の自由民権運動になぜ“武士達(文字通りラスト・サムライ)”が絡んでいるのか?考えてみたら「アカデミズム」以外できちんと述べられているのか?オイラを含めた歴史ファンは振り返るのも良いのではないでしょうか?イデオロギー云々を払拭して読む事をお勧めします。

因みに井上センセは
“中岡慎太郎”萌えだそうざます!
(どうみても井上センセの中岡ボタホメはヤオイーざますなあ)

☆☆☆☆
お勧め!
井上 清
岩波現代文庫 学術112
60 戦争論  4月9日 クラウゼヴィッツ戦争論下巻。

戦術論である“防禦”と“攻撃(草案)”そして“戦争計画”が挙げられている。
戦争についてはこれが200年以上も前もの思想であるのかと驚くばかり、曰く
『およそ戦争の性格と主要な輪郭とはその国の政治の規模と政治的事情とから生じる、それだから戦争はなによりもまずかかる性格と輪郭とに関して確実と思われるような事項を目安として把握されなければならない。(戦争論下巻p32)』

それにしてもクラウゼヴィッツセンセも、この戦争論を纏める事が出来ず、奥さんが草稿を纏めた為に今でも難解な文章となり、更に訳者のセンセが当時のヨーロッパ軍事事情を把握していないので、時々トンチンカンな文章がでてくるというが、そもそもオイラも当時の軍事事情に精通している訳ではないので問題なかっりして。

☆☆☆
クラウゼヴィッツ
Kari von Clausewitz
篠田 英雄 訳
岩波文庫 115-3
61 増訂 明治維新の国際的環境 4月10日 文久年間から起きた生麦事件から、明治維新達成後に起きた戊辰戦争まで、日本を取り囲んだ諸外国の外交攻勢と、それに対する幕府、西国諸藩、明治新政府の対応について述べた論文。全文で1000ページにも上る大作。元来は三冊に分冊されていたが、補訂版となって一冊に纏められた。

膨大な外交文書を中心に、英国外交官ラサフォード・オールコック、ハリー・パークス
などの外交官から、徳川幕府の首尾一貫としない政策批判と、薩英戦争、下関戦争を隔てて対外政策に関して首尾一貫としはじめるとしたなど書かれている。特にパークス自体は薩長側贔屓という訳ではなく、幕府側(特に徳川慶喜)が首尾一貫とした政策を取れば、幕府を評価するなど、英国側としては対外政策を明確にしたスタンスをとる政権について支持している。国内政策についても対外圧力で政策が変更になったと書かれているが、今の日本も対外圧力に屈しやすいからなあ。
作者の石井孝氏は幕末外交史のエキスパートで、特に英国外務省の公式外交文書が翻訳できるだけに、英国の対日外交の全容について細かく論考されている本でもある。

とにかく厚い本!電車で読むときは殆ど『石抱き』の刑!一日100ページ読めればいい方で飯場で読むときは目立つ目立つ!文章は読みやすいのだが、これなら三冊ぐらいに分冊して欲しかった。時系列にまとまっているので分かりやすいが、読むのにこれだけ腕が鍛えられる本はなかったざます!

また、時々石井氏の持論について、幕府も新政府も英国外交に隷属していたという事(卑屈ともいえる態度で)という事であるが、当時の日本の国力では、対英外交では卑屈になるしかないのか。石井センセは、その証拠として慶応四年三月の新政府の高札に「万国の公法を以って条約御履行あらせられ候に付きては、全国の人民叡旨を奉戴し心得違いこれ無き様仰せつかされ候、自今以後猥(みだ)りに外国人を殺害し或いは不心得の所業等いたし候ものは朝命に悖(もと)り御国難を醸成し候(略)」と書かれたのがパークスの圧力によるものであると言う。外圧を跳ね除ける(即ち大攘夷)を実行するのにそれから30年以上もかかったからねえ。

以外や幕末ファンもイギリスが薩長贔屓であったと思っている人が結構居るが、この本を読むとそうではない事が分かるし、諸外国から見た幕末史が大事である事(そもそも明治維新の導火線がペリー来航に在る事を把握すべきであるのだが)が分かります。絶版故に古書価格暴騰中!




☆☆☆☆☆
チョーお勧め!
だが
絶版!
石井孝
吉川弘文館
62 幕末政治家 4月21日 旧幕臣・福地源一郎(桜痴)による幕臣論。
阿部伊勢守から始り、水戸斉昭、堀田正睦、井伊直弼、岩瀬忠震、川路聖謨、安藤対馬、小栗又一など当時の幕府キャリアを紹介して「幕府に決して人材がなかった訳ではない」として、それでも幕府がなぜ崩壊したのか、そのプロセスと共に、彼ら幕臣達の軌跡を辿る本。又、幕末研究家である故佐々木潤之介氏最後の校注本でもある。

幕臣だけあって福地は殆ど幕府贔屓。但し、井伊直弼の独裁を批判したり、岩瀬肥後、水野痴雲、小栗又一など幕府キャリアの中でもピカイチの人物評価は正当。特に岩瀬忠震は現在でも正当な評価を受けているとは思えない。プロの研究家が小栗上野介よりも評価してもいいのではないか?かのハリスが高い評価を下しているというのに。特に佐幕贔屓の研究家諸氏は、小栗のように小説受けする人物だけではなく、対米外交でハリスをキリキリ言わせた岩瀬をもう少し評価を高く見ても良いのではないかね?

☆☆☆☆☆
チョーお勧め!
福地桜痴
佐々木潤之介 校注
岩波文庫 青186-1
63 神皇正統記 4月22日 南北朝時代、後醍醐天皇に仕えた北畠親房が、対関東地域の北朝シンパに対してある意味プロパガンダのために著したとも言われる天皇の歴史本。

南朝方天皇の正当性を訴える為に、序論から始り神代から始り、奈良、平安、鎌倉等の歴代天皇を顕彰し、時には批判もしている本。「日本は神の国ざます」と始まって入るが、偏狭なナショナリズム論ではなく、あくまでも南朝側後醍醐天皇の正当性を物語り形式で語っている啓蒙本と言った方がいいのか。

現代語訳されている為に読みやすくなっており、かつ北畠の思想について分かりやすく説明されている。頼山陽の日本外史では北畠に対して批判的ではあるが(つまり北畠自身は盲目的に天皇賛美をおこなっていない証拠ともいえるのだが)北畠の立場としては「天皇の正統な継承」を述べている中での批判であると言いたいのではないのかなあっと邪推。

☆☆☆☆
お勧め!
北畠親房 原著
松村武夫 訳
教育社新書 21
64 支配の社会学 T
経済と社会 第二部 第九章
4月24日 マックス・ウエーバーによる支配の論理を社会学から考察した本。

兎に角チョーが付くほど難解!ワケワカランところは徹底的に訳が分かりかせん!というと見も蓋も無いが、支配という構造を分析したと書けばいいのか?
これを読もうとした理由は「支配」という見地で幕末を考えようとしたのだが、物凄く分かりやすい部分と、涙が出るほど難解な部分が両極端すぎた!

幕府キャリアによる支配という見識と、明治維新政府による支配の論理で考える時に読んでおけば徳かなと思ったが、体系的に社会学を習ったこともないのに、「種」が割れるわけがなかったざます!

☆☆

マックス ウエーバー
Max Weber
世良 晃志郎
創文社版
65 日本外史 上巻 5月2日 武家時代を中核として、武士の歴史を述べた本。史書というよりも皇室に対して武士がどう捕らえているのか、名分について述べた本ともいえるイデオロギー論的本。但し、源平合戦から関ヶ原までの戦争絵巻と読んでも差支えない本であるかもしれない。因みに『外史』とは頼山陽自身が編纂した史書で正規の史書ではないという意味。

春陽堂版は上下巻に分かれており、上巻は

源氏前記-平氏
源氏正記-源氏
源氏後記-北条氏
新田氏前記-楠氏
新田氏正記-新田氏
足利氏正記-足利氏
足利氏後記-後北条氏
足利氏後記-武田氏・上杉氏

で構成。

「武士が如何に生きるべきであるか、また天皇に対して忠義を尽すべきか」が書かれている故に、実は武家政治に対して間接批判を行っているが、江戸時代にそほーんな御政道批判などできる訳がなく、武士の忠義を描いておいて在る意味幕府批判を行っているとも言える。楠木正成をベタほめしている所を読めば意図がなんとなくわかるざますよん。
その思想は息子頼三樹三郎に継がれ、更に日本外史の思想は、その後の尊皇攘夷運動に於ける「草莽の志士」にも影響が受け継がれていく。かの近藤勇も愛読者であるので、新選組ファンなら一読してみましょう。オイラは近藤勇も「草莽の志士」という考えざますよん。

なお、春陽堂版は振り仮名付きで読みやすいですが、戦前の本故にイデオロギー臭があり、平泉センセの校訂がなにやら香ばしいので、できれば岩波版の本が良かれと考えまする。それでも「読みにくい」というのであれば中公から現代語訳版がでております。

☆☆☆☆☆
チョーお勧め!
だが
絶版!
頼山陽
井上哲次郎 上田万年 監修
平泉澄 校訂
大日本文庫 国史編
春陽堂版
66 蘭学事始 5月7日 蘭学、そして西洋医学の黎明期を語った本。杉田玄白らが『ターヘル・アナトピア』こと解体新書を翻訳した時の悪戦苦闘話から、黎明期の蘭学の話を掲載。本人の手記だけに、当時のオランダ語事典がない状況下で一字一句の意味付けまで考えてヒーヒーと悪戦苦闘の連発!

また、当時の西洋医学の現状や、杉田玄白と交際のあった人物(平賀源内、青木昆陽等)についても書かれている。漫画『風雲児たち』でもネタとして使っていたが、たった一言を解明すると言う事が如何に大変であったか。蘭学黎明期の一級史料!なお、巻末に『蘭学事始』タイトルについての考察が書かれています。

☆☆☆☆☆
チョーお勧め!
杉田玄白
緒方富雄 校注
岩波文庫 青20-1
67 世直し 5月8日 幕末期から維新後のカオスに起きた世直し一揆について論じた本。
変革期に民衆のエネルギーの爆発として、百姓達の世直し運動の高揚と挫折、そして終焉をそれぞれ時期に分けて説明している。根底としてマルクス史観の香りがするものの、これを払拭すると百姓達も時代の変革を嗅ぎ付けて、彼ら自身の生き残りを掛けた運動を展開している事がわかる。

よく世直し一揆を権力からの抵抗若しくは革命の失敗的な諭旨で論じる方もおられるが、どーもオイラは違うというか、考えすぎではないかなあっと。どちらかというと百姓達は手前らが権力者との契約関係を違えたときに「ゴルアアア!」と叛旗を翻すような雰囲気だけどねえ。深く考えすぎのような気がするざます。
まあ最近は田中圭一センセの説(脱貧農史観)が正しいとオイラも考えるけど。強引な経済史観はそろそろ終わりにするべきだよ。

☆☆☆
佐々木潤之介
岩波新書 黄-90
68 江戸城御庭番
徳川将軍の耳と目
5月9日 江戸時代の隠密・お庭番の話だが、白土三平の劇画のような隠密は出てこず、どちらかというと現代の諜報機関のような情報管制組織に近いようです。
暴れん坊将軍が紀伊から連れてきたお庭衆の諜報活動、情報整理、そして将軍への意見具申まで(インテリジェンス)の流れの中で、将軍の耳目としての活動と、インテリジェンスの功績として異例の昇格、そして彼らの風聞書から見た時代の流れを追う事により、江戸時代の政治状況が見えてくる。

お庭番としての彼らの情報分析能力の高さも然ることながら、収集した情報の管理能力について、今問題になっている機密保持の高いこと。そして彼らお庭番の視点の鋭さから、幕府キャリアの高さに関心するばかりです。こりゃ異例の出世が多い訳ざます。

☆☆☆☆
お勧め!
深井雅海
中公新書 1073
69 天皇親政
佐々木高行日記にみる明治政府と宮廷
5月10日 薩長藩閥と対決し、天皇親政を目論んだ側近『佐々木高行』の戦いと明治天皇の記録。
旧土佐藩士でもある佐々木高行の残した日記『保古飛呂比』より、佐々木高行と元田永孚が目指した天皇による政治主導と、それを阻止しようとした明治の元勲達の暗闘を描いている。

これを読むと、飛鳥井雅道もそうであるが、明治国家が目指したのは立憲君主制であるが、イギリス的な『王は統治すれど君臨せず』的な政治を目指していたというのは歴史のアイロニーかね。

結果的に佐々木の目指した天皇親政には至らなかったのですが。

☆☆☆☆
お勧め!
笠原英彦
中公新書 1231
70 物語藩史 2 5月11日 仙台藩 会津藩 水戸藩 佐倉藩 小田原藩それぞれの通史を地元郷土史家や学者が地域的特長を出した本。各藩の通史としてはわかりやすい名著。

仙台藩や会津藩などの大国もそうだが、大抵の藩が藩政中期から末期に掛けての改革運動が挫折してしまったのと、商業経済に引っ張られてしまった形で藩の予算が破滅的になてしまったケースが多い。
仙台に至っては実収入100万石でありながら、気象被害(風害、飢饉)によって米経済が破綻した事。大藩故に伊達騒動に見られる部内抗争によって、改革も促進されなかった事。
会津藩は名分的見地で述べられる事が多いが、庄司吉之助センセは経済を中心に視点を展開しており、会津藩政の経済的破綻と、藩政に抵抗する百姓達の抵抗を描いている。会津藩の百姓が戊辰戦役で藩に協力したという逸話は差し引くべきであろう。
水戸藩については天狗党に肩入れしすぎる史観を批判しており、むしろ諸生党(結城、市川などの派閥)の記録を抹殺している事に批判的である。オイラも当然ながら水戸藩ゲバルトについての悲劇だけではなく、諸生党を解明する必要があると考える。

病的な郷土愛的視点がないだけに、大まかな藩史の参考になります。

☆☆☆☆
お勧め!
児島幸多 北島正元
新人物往来社
71 近世日本国民史32
開国日本B
神奈川条約締結編
5月13日 徳富蘇峰の修史本第32巻目!

今回はペルリ(ペリー)の第二回来航と、それに伴う日米和親条約の締結と、その周辺の騒動、そして条約の批准までを描く。

蘇峰のペリーに対する評価については『あくまでもペリーはあくまでもアメリカの権益の代表であって、決して日本の恩人ではない』と論じており、むしろ蘇峰はハルリス(ハリス)に対して高い評価を下している。
第二回来航もペリーは対日交渉で武力衝突も辞さない態度で挑んでいるが、現在のアメリカも外交交渉については戦争を想定して交渉している事を考えると、外交という事を考えうるにアメリカ・日本のスタンスは現代でも変わらないというのか。

おもしろいのは吉田松陰の密航騒動について詳細に書かれており、ペリーも実はこの珍騒動については松蔭の好奇心の高さに対して好感を感じていた事が書かれていた。また日米和親条約の批准についても、ペリー帰帆後、約九ヶ月で再び来航した事を考えると、最早日本は資本主義陣営に組み込まれてしまった感がある。

考現学的表現ながら、今の日米関係と約150年前もの日米関係を考えると、どれだけの相違があるのだろうか。

☆☆☆☆☆☆
超絶お勧め!
だが絶版!
徳富蘇峰
講談社学術文庫380
72 幕末の藩政改革 5月14日 田中彰センセによる長州藩の幕末藩政改革論。
天保大一揆による長州藩藩政の軋みと、その後に始まる藩政改革を通して、長州藩のトップがどのようにして藩政改革を行ってきたのか。そしてこれらの改革がその後の明治維新にどのようにして影響を受けたのか。天保、安政、それぞれの時代の改革から長州農政と経済対策、そして百姓達の身分分解阻止(水飲み百姓に落下するか、百姓を辞めて商売を始めたりして身分制度そのものを崩壊する事を留める)の状況から、その後の維新変革を読み取ろうとするもの。
なんといっても改革の主体が、実は下級武士ではなく、上層武士であった事など、案外知られていないことが書かれている。

本のタイトルは藩政改革と謳っているが、実際は天保大一揆の状況がかなりのウエイトで占められており、田中センセの意図もここにあるのでしょう。

☆☆☆☆
お勧め!
だが絶版!
田中彰
塙書房
73 日本の歴史16
明治維新
5月15日 戊辰内乱から西南戦争まで、明治維新前後の政治的及び経済、文化の動乱時期を分かりやすく書いた本。

カラー図版など取り入れて分かりやすく解説をされている。特に世界の中の明治維新と銘打っており、経済と文化などの影響について書かれている。又、明治維新研究史について、井上清、服部之総、羽仁五郎等の御大の説なども紹介されてもいる。

文句をつけるならば鳥羽・伏見会戦について『武器の優劣』を論じているが、そりゃ違うざましょう。当時、戦いの相手たる幕府歩兵は最新鋭のシャスポー銃を装備していたざますよん。
殖産産業、文化については図版が豊富なので、全体的に視聴に訴える作りとなっています。


☆☆☆
中村哲
集英社
74 明治大帝 5月16日 明治天皇が、なぜ『大帝』と称されたのか?明治天皇の生涯を通して明治と言う時代と、天皇としての実像に迫った本。

今までの明治天皇関連の本では好著。明治天皇に視点を合わせてなぜ明治天皇だけが『大帝』と称される事となったのか?明治維新前後の皇室と明治天皇を取り巻いた維新の元勲達が、天皇を政治的にどのように位置づけようとしたのか?先の『天皇親政佐々木高行日記にみる明治政府と宮廷』と併用して読んで頂くと、明治という時代に於ける皇室の位置づけについて理解できます。

特に、夏目漱石から見た明治天皇と、乃木将軍の殉死について、彼らから見た明治天皇を対比して当時の人々の天皇観について考えるのもよいのではないでしょうか?

☆☆☆☆
お勧め!
飛鳥井雅道
講談社学術文庫 1570
75 人国記・新人国記 5月20日 日本を六十余州に分けて、各国の地勢と民情について事細かく書かれた本。読んでみると結構地域民情についてドキっとさせられる記述が書かれており、結構洒落にならない。

人国記の設立年代は今でも不明だそうですが、その後関祖衡が地図をつけてコメントを追加。それぞれの地域特色についてコメントもそうですが、そのユニークな国風短評については、一体誰が何の目的で編纂したのか未だに不明だそうです。(一説によると軍記書ではないかという話もあるそうです。)

☆☆☆☆
お勧め!
浅野健二 校注
岩波文庫 青28-1
76 人身売買
-海外出稼ぎ女-
5月26日 かつて戦前に存在した天草女による海外の活動。そして誘拐による東アジアに於ける人身売買など、歴史的に恥部としてしまった“からゆきさん”の活動を描く。
風俗史ともいえるが戦前から活動的であtった天草などの地域の海外出稼ぎ事情の歴史的背景や、日本人子女の誘拐売買の話など、山椒大夫でも描かれた人攫い(ひとさらい)や人身売買について、かなり突っ込んだ内容となっている。

近世から近代に掛けて天草地方の歴史的背景を考察して、なぜ海外に出稼ぎに赴く女を“天草女”と呼称するのか?“からゆきさん”が死語とされ“じゃぱゆきさん”の語源となり、また“じゃぱゆきさん”という言葉も死語となった今こそ読む価値はあるのではないか?又、以外と知られていない明治から昭和までの人身売買の実態や、海外売春婦の状況などが興味深い。

人身売買については、現在でも家出少女を中心に日本人女(あえて女と記す)を狙って活動する面々がいたり(事実、韓国に売られた女子大生の事件が過去にあった)、タイ国境で行われている日本人によるようじょ買春ツアーなど、性風俗暗黒史は今でも左程かわらんかっと思ってみたり。

サイキック度濃厚!

☆☆☆☆
お勧め!
★★★★★★
森 克己
至文堂 日本歴史新書 5
77 榎本武揚 5月26日 帯に『苦悩を生きた旧幕臣の一生』と書かれている如く、幕末から明治までの榎本武揚の半生を描いた本。但し、幕末〜戊辰戦役の榎本の行動だけではなく、むしろその後の明治維新政府で活躍した榎本を中心に描いている本。
著者自身も明治新政府で活躍した榎本を評価すべきと書かれており、北海道開拓使時代、対ロシア北方国境策定状況など、見方によっては『敗戦処理投手』のようにも見えるものの、トラブル・シューターとして高い実務能力を持つ榎本を評価すべきという意見は同意。また、愛妻家と言う事で奥さんへの手紙が多い事や、旧幕府系の人たちに対する援助など、知られていない事柄が書かれていた。

榎本の低い評価は、王政復古史観や福沢諭吉の「痩せ我慢の説」に於ける榎本パッシングだけではなく、現在の歴史作家の榎本パッシングにも問題があるようにも考える。歴史観云々ではなく、ご都合主義的考えについては戴けない。むしろ、テクノクラートとしての榎本評価をすべきであるのに、作家が不用意な感情論で人物評価を下すのは戴けない。

本来、敗者の維新史というスタンスで描くのであれば、榎本や大鳥圭介、山川大蔵のように、明治維新政府に出仕したからといって批判(というよりも罵倒が多い)するのはどうだか。作家の妄想としては下司の部類だと思うよ(毒

絶版なのが残念!

☆☆☆☆
お勧め!
だが絶版!
加茂儀一
中公文庫 M369
78 歴史と視点
-私の雑記帖-
5月27日 司馬遼太郎の歴史エッセイ&実体験談。

司馬の旅のエッセイから、なぜか旧軍時代の戦車部隊の話になったり、長州の白井小助の明治の元勲への嫌がらせ話、佐々木只三郎の逸話(実は司馬は佐々木只三郎が大嫌いなのがわかった)などの四方山話集。

司馬史観なるものを理解する為に読んでみたが、分かった事は司馬が特定イデオロギーを嫌悪する傾向にあったこと。(国粋主義であろうと共産主義であろうと両極端な代物)昭和軍部の批判は、やっぱ実体験からで、当時の戦車連隊でセコハンの戦車に乗せられて、いざっと言う時には「地方人を轢き殺してでも前進しろ」と上官から言われれば、そりゃ軍不審にもなるわなあ。

其の他に江原素六の逸話など幕末の話題もありました。

それにしては読みやすい本ではありんすなあ〜。一般読者が、司馬の影響を受けて彼の創作を真実と解釈するのも無理はないか。

☆☆☆
司馬遼太郎
新潮文庫〔草〕一五二=26=Z
79 維新暗殺秘録 5月28日 井伊大老暗殺から始り、広沢真臣謀殺まで幕末維新期に起きた暗殺事件を纏めたもの。切っ掛けは高知に訪問されたE.O.ライシャワー博士が、その直後に暗殺未遂にあった事が切っ掛けだそうです。

井伊大老暗殺よりも、案外にしられていない人物(目明し 猿の文吉、平野屋寿三郎、冷泉為恭など)を逸話や史料を引用しながら紹介している独特の平尾ワールドのほうがおもしろい。
平尾センセも司馬同様に読みやすい上に、地方史家を代表するだけに説得力がある。もちろん新解釈の発表で、一部の平尾説に齟齬があるものの、別に違和感はそれほどありませんでした。

これも絶版なのが残念!

☆☆☆☆
お勧め!
だが絶版!
平尾道雄
河出文庫 819A
80 西国立志編 5月29日 サミュエル・スマイルズの『Self-Hrlp(自助論)』を旧幕臣でもある中村正直が『西国立志編』翻訳刊行したもの。

西洋の偉人などの立身談が書かれているが、基本コンセプトは『独立独行の精神』であり『天は自ら助くる者助く』にあり、明治の若者に発奮を起こさせるような記述となっており、日本でベスト・セラーとなった。また、明治天皇にも進呈され、天皇の学習にも使われた本。文語体ではあるものの、漢字カナを現代風にアレンジしなおしているので読みやすい。また、スマイルズの著書が本拠地イギリスで絶えてしまい、この日本で花開いているというのも面白い逸話である。
本の内容も、単純な立身出世物語ではなく、中には志半ばに途絶えるとうな話もあるが、日本人にはそれがウケたのかもしれない。著者の中村正直が旧幕臣で、儒学の大家である林大学すら認めた蘭学者で、幕末に留学体験を持つという事を念頭に置いて読んでみると、中村のイデオロギーの柔軟性と、この本を翻訳した切っ掛けが思い浮かんで面白い。啓蒙本としても、福沢諭吉の『学問のススメ』よりおもしろい!

なお、中村正直も『維新暗殺秘録』で暗殺未遂に逢っていることが書かれていました。

☆☆☆☆☆
チョーお勧め!
サミュエル・スマイルズ
Samuel Smiles
中村正直 訳
講談社学術文庫 527
81 中山道を歩く 
中山道六十九次街道宿場ガイド
6月1日 日本橋から三条大橋まで、現代のルートから江戸時代当時の中山道を眺めて、当時の歴史を紀行しようとする本。

ガイドと銘打っているだけに、単行本でありながら、図版や写真が豊富の為に〔後追い学習〕が容易になる形で書かれている。ガイドだけにお気楽に読める一方、中山道の時代背景や、幕末の和宮降嫁などの逸話など、上巻は関東周辺を中心に散歩がてらに回れるように書かれている。流石に信州地域に入ると“登山”となるのでキツイ状況であるまする。

☆☆☆☆
お勧め!
横山正治
安斉達雄
学研M文庫 よ1-1
82 戦国の作法
村の紛争解決
6月2日 世後期から近世初期までの村々が巻き込まれた紛争に於ける解決方法、収拾策など村の習慣など通俗的な話から、お堅い法的話まで書かれた本。

言葉戦いなど罵詈雑言などネット中傷よりは洒落が効いているいたり、村で人質の身代わりを出す逸話や、御伽噺の“ものぐさ太郎”が、実は村に於いての(徴用としての)身代わりであったなどという見解に唸ってしまった。中世庄屋と近世庄屋との相違など、戦国期でも村と権力者との係わり合いなどが書かれている。

“雑兵たちの戦場”の別バージョン的な本とも言える、庶民の戦国史。研究論文的に書かれているが、ハウツー本よりはおもしろかったです。
サイキック度若干あり。

☆☆☆☆
お勧め!
★★★★★
藤木久志
平凡社ライブラリー ふ-10-1
83 新選組
「最後の武士」の実像
6月3日 伝説から歴史へ-と銘打った本。
近藤勇ら新選組を史料から紐解き、「時代に取り残された武士集団」は本当か?という疑問から始り、今まであった「最後の誠の武士」といった情緒的なイメージを払拭し、新選組を新たな視点で読み返した本。

と言っている割には「松浦玲(新選組)、宮地正人(歴史の中の新選組)」の新選組史観の打ち直し的本にも見えなくも無い。松浦、宮地両人共に新選組を「尊王攘夷の志士」という位置づけであり、新選組は「政治結社」を目指したと位置づけで最近は見られているが(オイラはこの説が一番しっくり行く。既存の近藤書簡を読めば読むほど尽忠報国という言葉に引っかかる)、残念ながらポリティカル・アクション集団としての新選組があまり語られていなかった。
趣旨としては、新選組は近代組織であったと言いたいそうであるが、そうなのかなあ・・・・と考えてみたり。(説に全面否定はしませんが)
本文に書かれている近藤、土方、沖田書簡を時系列に纏めてある表は重宝。特に近藤書簡集を編纂されない現状で、この一覧表は便利です。

☆☆
大石学
中公新書 1773
84 武士と天皇
-王権をめぐる相克-
6月4日 江戸幕府がなぜ天皇制を歴史的に廃止できなかったのか?
歴代の武家政権が天皇制を利用して政治的に浸透し、政権を簒奪してはきたが、肝心の天皇に成り変れなかった理由を考察した本。

武家政権で天皇制を簒奪しようとして、あと一歩まで進んだ足利義満、戦国期にしたたかに生き残りを模索した正親町天皇、そのご徳川政権との対決と、武家にない“権威”故に天皇制を廃止出来なかった徳川幕府。新井白石が天皇制に異議を唱えても、幕末期に公武合体を提訴せざるおえなかった事を考えると、武家政権が簒奪できなかった“権威”に縋る事により、政権を維持できた事、“権威”を後光にかざす事により生き残れた天皇制。イデオロギー抜きで中世期から幕末までの天皇制について考える本となっております。

☆☆☆☆
お勧め!
今谷明
岩波新書 286
85 日本外史 下巻 6月9日 武家時代を中核として、武士の歴史を述べた本。その実、天皇に対する忠節をコンコンと述べるイデオロギー本でもある。下巻は

足利記後記-毛利氏
徳川氏前記-織田氏
徳川氏前記-豊臣氏
徳川氏正記-徳川氏

より構成


織豊政権から徳川政権に至るまでの歴史物語を、武士の忠義(天皇に対して)を中核に書かれている。漫画家のみなもと太郎氏は“風雲児たち”のなかで「徳川幕府を褒めちぎってはいる者の、根底に武家政権に対する批判が間接的に含まれている」と述べている。
それぞれの記紀の終了に「外史氏曰く(頼山陽の私見として考えるに)」というセリフから読み解く事はオイラにゃできませんが、イデオロギー的に読むより軍記物として読んでしまいました。

☆☆☆☆☆
チョーお勧め!
だが
絶版!
頼山陽
井上哲次郎 上田万年 監修
平泉澄 校訂
大日本文庫 国史編
春陽堂版
86 日本の歴史 6
武士の登場
6月10日 平将門の乱から始まる東国の武(もののふ)達が、如何にして平安京の宮廷政権から権力を簒奪していくのか?荘園の広がりから、院政による権力の強化、そして平家物語に語られる平氏による古代政権の簒奪に始り、前九年、後三年の役による源氏の強化、僧兵の横暴、平治の乱による平家政権の成立から、源平合戦(治承・寿永の内乱)までを通して、武士が古代律令政権を崩壊に追い込み、自ら権力を確立するまでを描く。

武士の時代の黎明期という事ですが、解説(改訂版に記載)を読むと、現在でも武士の発生についてはよくわかっていないとの事。荘園制が成立する課程に於ける自衛集団とかいろいろ言われていますが、本当のところは今でも解明されていないようです。今後も武士発生の起原については、学説としていろいろ出てくるでしょう。

それにしても当時の権力者たる貴族達が、武装集団としての武士団を利用しようとして、結果的に武士達に利用されてしまうとはねえ〜。

古書屋に行けば安価で手に入りますが、この本については解説を読むことをお勧めしますので、あえて改訂版を手に入れて下さい。

☆☆☆☆☆
チョーお勧め!
竹内理三
中公文庫 S-2-6
87 悪党 6月11日 鎌倉末期から南北朝初期に活動した反体制集団とも言える“悪党”の活躍と末路を描いた本。

悪党というと“ヒール”的イメージで捉えてしまうが、こちらの悪党は当時の鎌倉幕府や、支配地の守護や地頭に対しての反体制行為を指す事だそうです。それにしては関所襲撃だの、商人への横領やら強訴だのとゲリラ活動が活発になっている。更に、構成員になぜか“入道”と称する坊主が多い事。寺がバックについているぞと言いたげかなあ?

悪党というと南北朝初期に活躍した“楠木党”を思い浮かべるが、楠木党の末裔である知人の話を聞くと、なんでも楠木党=悪党とする図式を和歌山では嫌がるそうだが、本人曰く
「ヒールと言え!悪党上等!」
たしかに反体制的体質と同時に、単純な夜盗的集団ともいえたのだが、荘園制度や守護・地頭制度が崩壊する過程で現れたあだ花というべきでしょうか?

☆☆☆☆
お勧め!
小泉宣右
教育社歴史新書 63
88 守護と地頭 6月11日 守護・地頭の起原と、守護領国設立までの研究論文。守護・地頭の成立についての学説批判もあり。
第一章 序説
第二章 「守護とは何か」
第三章 鎌倉幕府の守護制度
第四章 「地頭」とは何か
第五章 地頭成立の歴史的前提
第六章 地頭制度の成立
第七章 鎌倉幕府の地頭制度
第八章 地頭領主制
第九章 守護領国の成立

で構成。

守護>>>地頭という図式が定説であり、今でもそう思っていたのだが、この本によると守護=地頭と初期は同程度の立場であったそうだ。また地頭による百姓達の締め付け(泣く子と地頭ね)、また守護が守護大名になる過程について説明がよっく分かりませんでした。興味対象外という事もあったのでちんぷんかんぷんな部分もあったが、
律令制→私田制→荘園制度→守護・地頭
の関係が理解できないと、先の「武士の成立」も見えて来ない。歴史はまな板の鯉のようにブツきりにすべからず。

☆☆☆
安田元久
至文堂
89 「適塾」の研究
なぜ逸材が輩出したのか
6月11日 緒方洪庵が主催する適々斉塾こと適塾のシステムから、現在の教育制度と関連して、なぜ私塾としてあれだけの人材を輩出したのか。サラリーマン読本ながら、代表的な適塾生の半生を紹介して、彼らがどのように適塾の影響を受けたのかを考えて、緒方の敵塾システムの謎を解く。

適塾というと、福沢諭吉が副翁自伝で、その青春を謳歌した事が生き生きと書かれていたように、若きの青春とハチャメチャで豪快さに魅力があるのだが、自治自活的なカリキュラムとヲタク集団がちゃんぽんとなって、本来の医学塾がおもしろい風に逸脱して、大村益次郎、大鳥圭介のような軍人や橋本佐内のような政治家、久坂玄機(久坂玄瑞の兄)のように医者は当然ながら、手塚良庵(手塚治虫の曽祖父)のようなハチャメチャな軍医も出てきたわ、福沢諭吉のように「天は俺の上に俺を作らず」といった元祖ゴーマニストもでてくるわ。こりゃカオスの集団ざます(大爆笑

私塾というと松下村塾と対比されているが、村塾が政治集団であったのに対して、適塾の面々は橋本佐内を除く面々にイデオロギー的関心はなく、精々が「開国」しかないというぐらい。この自由な気風とヲタクテイストが適塾のエネルギーではないざましょうかねえ。

☆☆☆☆
お勧め!
百瀬明治
PHP
90 中世武家の作法 6月12日 武家故実から中世武士の姿を見ようとした本。中世武士ハウツー本と言ったほうが早いかもしれないざます(笑。それだけ学術本なのに分かりやすく書かれています。

第一 弓矢軍人の作法
第二 武家奉公の作法
第三 室町幕府の格式と作法
第四 人生儀礼の作法
で構成。

人生儀礼の作法については、現代人の儀礼にも影響を及ぼしているというのも凄い話ではあります。また、徳川幕府の典礼についても、室町幕府の格式と作法に則っているそうで、東国武士は原始人という比喩は、ある意味当っているなあっと。
酒食饗応では、いわゆる「一気飲み」の作法があって、ペナルティに酒を飲まさせるなど現代のコンパじゃねーか!それにしては空腹に読むと更に腹が減る内容ざました。

☆☆☆
二木謙一
吉川弘文館
日本歴史叢書 58
91 幕末維新と松平春嶽 6月13日 幕末維新期に於ける政治情勢を、松平春嶽の半生を通して考察した本。かつて新人物往来社で出版された「松平春嶽のすべて」の続編的本。

福井藩が嘉永末期から安政大獄までの将軍継嗣問題に於ける前半期の政治動向と、政治総裁職に就任した公武合体運動に関わる後半期の政治情勢。そして明治維新戦後の近代日本の黎明期に主流となりえず、政治の表舞台から退く状況が書かれている。

春嶽というと優柔不断と批判(もしくは罵倒。なぜどこぞの贔屓小説家が罵倒するのかね?だから幕末ファンが減るんだろ。)されているが、幕末末期の複雑な政治要請で如何に福井藩や徳川幕府だけではなく、国家としての日本が生き残れるかを模索していたが書かれている。
春嶽の政治動向が正しかったかどうかというより、廃藩置県に於いて福井藩のサムライ達が万歳三唱をした事を考えると、彼ら福井藩(中根雪江、村田氏寿、、三岡八郎、橋本佐内、ブレーンとしての横井小楠)の歴史的意義は決して無駄ではなかった事はたしか。無論、会津藩であろうと旧幕府、粛清された長州奇兵隊も同じと考えるがね。

福井の視点で見る本が少ないだけに、おもしろい本ではありました。

☆☆☆☆☆
チョーお勧め!
三上一夫
吉川弘文館
92 藤原定家の時代
-中世文化の空間-
6月14日 貴族社会から武家社会へ。その狭間にいた歌人「藤原定家」の時代を、中世文化の側面から眺めた本。

新古今和歌集の編纂者として有名だそうですが、実はこれを読むまではあまり詳しく知りませんでした。つか、中世期の武士について調べるつもりで買ったんだけど、全然サパーリわかりませんでした。但し、おもろい記事として「後白河法皇の衆道話」などと、雅どころかゲスいサイキックな内容も書かれていたりします。


しかし、ミヤビ〜でまったりした「おじゃる丸」的世界は苦手な上に
衆道禁止!

☆☆☆

★★★★★
五味文彦
岩波新書 178
93 ある運命について 6月15日 司馬遼太郎のエッセイ兼愚痴集。

司馬の本は読みやすい故に、引き込みやすいのと、どうしても鵜呑みにしてしまい傾向にある。この本は歴史エッセイと知人の挿話、そして愚痴話も結構ある。丁度メジャーになりつつある頃の挿話もあったりして、与太話としてもおもしろい。

新選組を通した「正義」という言葉の怖さを書いた話や、「山姥の家」では、自称「ヤマンバ」のオバハンによるサイキックな逸話や、司馬の遠い親戚による救いようの無い馬鹿話もあり。
結構香ばしい匂いが漂うトンチキ逸話多し。

本を読みすぎてパニックを起こした時は、司馬小説か海音寺小説で頭を休めるようにしています。つか、本を読んで頭を休めるのか俺!

☆☆☆

★★★★★
司馬遼太郎
中公文庫 し-6-41
94 福沢諭吉 6月16日 「天は俺の上に俺を作らず!」元祖ゴーマニスト福沢諭吉の半生。藩という枠組みと封建身分制度、そして門閥により逼塞された少年期から、それらの束縛から離脱して大坂の適塾での青春時代。翻訳家としての江戸在住時代。咸臨丸による渡米から、欧州訪問などの諸外国訪問による知識の吸収と、其れに伴い幕末から明治維新までの変革期で何を成すのか?
啓蒙家としてのゴーマニストぶりと、故に唱える独立自尊の言葉の意味なすところ、そして日本人としての意識を考えるとこれが結構おもしろい。福沢の啓蒙主義の元となった意識の根底には、門閥(封建的身分制度)と攘夷主義(保守主義)に対する侮蔑があるものの、自信は以外にも保守的な思考をこれまた意識の根底にあるのも事実。刀を捨てていながら“武士”としての矜持を持ち、それ故に矛盾する部分が福沢の中で消化できたのは中津藩での自身の身分と、諸外国をみたことによる“種割れ”(ガンダムSEED)ではないかなと考えて見たり。

オイラとしては屁理屈をこねるようになった慶応時代の福沢よりは、適塾時代の青春を謳歌した福沢の話がおもしろいね。手塚良庵(マンガ陽だまりの樹の主人公でもあり、手塚治虫の先祖)センセの女好き話は福翁自伝で語られていたし。

☆☆☆
会田倉吉
吉川弘文館 人物叢書
95 葉隠 武士と「奉公」 6月17日 葉隠武士道の研究本。
従来、「武士とは死ぬ事と見つけたり」という言葉から、佐賀鍋島藩に於ける武士としての矜持を過酷なまでに到達させた思想本とも言われたが、そうではなく「奉公人として主君に仕えるべき心得を過酷なまでに記したハウツー本」と考えてしまった本。
本の内容も葉隠を著した山本常朝の半生と、常朝の地位と立場から葉隠成立を読みとているのが面白い。特に山本が語る「主君」に仕えるというのは「忍ぶ恋」の如くと書かれている部分があるが、これが佐賀の[骨切り侍(武骨物)]達で流行った『ホモホモライフ』・・・・・ではなく『衆道』も思考として絡んでいるのではと推測している。まあたしかに【おしん】でも佐賀の男尊女卑はぶったたかれた事があったけど、衆道はねえよなあ。
それはともかく、葉隠の解釈で山本常朝自身から読み取るというのが今まで為されておらず、葉隠そのものから思想を考えると単眼的な思考でしかないというのは納得。むしろ過酷ともいうべき奉公人(大久保彦左衛門曰く、犬コロ人生)の処世術として読んでみると・・・・・・・・・人生は辛いざます!(ああ、オイラもサラリーマンであり、犬コロざます!)

☆☆☆☆
お勧め!
小池喜明
講談社学術文庫 1386
96 日本人民の歴史 6月18日 タイトルから察しが着くが、歴史関連の本で小説以外でこれほどイデオロギー汚染が惨い本もあったものではない。それはまだ理解してもいいが、オイラがいけすかんのは手前が弾圧されたと自慢話を語る所。戦前の言論封鎖時代に弾圧されたのは理解できるが、それをもって「俺は日本人民の為に」等と押し付けがましく語るのはなんだかなあ。井上清センセもかなりのトンデモ史観を語っているが、こちらも似たり寄ったりのキング・トンデモ論を語っている。土一揆を共和制又は革命的人民の英雄的行動などとワケワカランし、弥生時代を原始共産制など現代の視点ならずとも考えすぎを通り越して「あんたはビョーキざます」としか思えない。
なんでイデオロギーというフィルターでしか歴史を眺めないのか?歴史に何を求めているのかさっぱり理解できない。左派系でもポジティブな内容なら面白く読むのだが、ネガティブな上に新興宗教的教義で書かれていてもオイラにはさっぱり理解できない。

戦後まもない時期で、左派系開放時期に書かれていたものである事から考えても、あまりにもの強弁による主張と、自分の正義のみでしか語られないウザさと、自ら投獄されたなどの自慢話ははっきり言って鼻持ちならない!
頼むからイデオロギーでなくて歴史を語れ!

時代にそぐわなくなれば、絶版になるのも当然であろう本。

★★★★★★
超絶お勧めしません!
絶版!
羽二五郎
岩波新書 35
97 体系日本の歴史 6
内乱と民衆の世紀
6月19日 室町末期から戦国時代突入までを述べた歴史本。
建武新政による後醍醐天皇の独善政治と、それに反発する足利尊氏率いる武士団による政権奪取と南北朝時代の始まり。足利義満による天皇家簒奪、足利義政による「恐怖政治」と、それに反発する諸侯、そして鎌倉公方による室町政府に対する反発と反逆、それが遠因となり義政の謀殺と鎌倉政権の反乱、日野富子の専横と室町政権の弱体化により応仁の乱となり、関東では鎌倉公方をめぐる派閥抗争により関八州は内戦となり、終に戦国時代を迎えるまでの概要が書かれている。

戦国時代の原因は、鎌倉北条政権からの歪みと、後醍醐天皇による「建武新政」の歪みと足利氏の台頭、足利氏内部の抗争が戦国時代の“因”と考えるのは鴉の穿った見方であろうか?著者の永原慶二センセは中世末期から戦国時代のエキスパート。専門書を読むよりはるかに判り易い。(実際に専門書を読んでは見たものの、東海地域の戦国史を研究されている大和田哲男センセを除く本はとてもではないが難しすぎる上、読みづらい!)

☆☆☆
永原慶二
小学館ライブラリー SL1006
98 中世の伊豆国 6月23日 先に紹介した大和田哲男氏による歴史論集で、韮山地域を中心に後北条氏による戦国時代の歴史を説く本。韮山町史に掲載された論文であるので、専門書なのだがわかりやすく書かれている。
伊勢新九郎を中心に伊豆に於ける伊勢氏の台頭と、伊勢(後北条)氏と今川氏の立場、息子北条氏綱による関東経営の強化と伊豆韮山を中心とした伊勢(後北条)氏の動向や、複雑な関東の情勢(山内上杉、扇谷上杉両家の確執と古方公方足利と堀越公方足利の政争)北条氏綱の台頭や、四公六民の税率の話、戦国の女性の生き方など、専門書でありながら安易に解説がされている。

特に注目すべきは、北条早雲(伊勢新九郎)にとっての御屋形様が当時自分の甥っ子でもある今川氏親であるとの指摘や、出自について播磨出生説(その後、当時の室町幕府の執事であった伊勢氏の養子となった説)などであろう。

戦国期研究者のセンセ達は、自分の説を定説とはしないで、後学の学徒達に宿題を投げかけるスタイルで論文を発表していますが、史料が絶無に近い戦国期のなかで、あれだけの説をたたき台に戦国時代の世界を解明しようとするのだから凄過ぎ!
良書であるが、税抜き9800円と高めなのが玉に瑕!

☆☆☆☆
お勧め!
大和田哲男
清文堂
大和田哲男著作集 5
99 江戸雑記帳 6月24日 作家、村上元三氏による江戸時代よもやま話。
茶坊主の話、大名の逸話、スリや松の廊下、武器や武具の話、町火消しによる喧嘩などのエピソードや、苦労の耐えない代官の話など下世話な話もあり。
後半部は歴史上の人物を中心に自身が小説で描いた人物などの逸話などが書かれている。義経の話などは鵯越の逸話を調べるために現地まで行った話や、歴史事件の接点で架空の逸話を入れた時に、末裔の方からといい合わせが来るなど歴史作家として注意しなくてはならないなあっとリサーチの大事さも書かれていた。

流石に長谷川伸門弟だけに、リサーチの大切さと「何を求めているのか」という事に関して理解競れている。

☆☆☆
村上元三
中公文庫 A83-3
100 開国始末 6月28日 安政大獄による大弾圧と、桜田事変により暗殺された井伊直弼の半生を、旧幕臣である島田三郎が描く。

主に井伊家史料(東大から出版)の書簡と公用方であった宇津木六之丞の公用方秘録(サンライズ出版から修正版が平成18年に出版予定)から現在でも誤解されている井伊直弼の実像に迫ろうというもの。

出版当時(明治二十一年)ですらアンチ井伊が多い中、井伊の誤解と井伊の目指したのが開国であるという論評で書かれているが、旧水戸派からは猛反発!福沢諭吉も井伊直弼については「彼は頑固一徹の三河武士であろうが」という皮肉すら発せられているぐらいで、井伊直弼の考えを啓蒙させるのが如何に難しかったか。但し、この本については井伊を懸賞する意味で書かれておる為に、提灯記事的内容に書かれている部分もあり、鵜呑みは危険。むしろ井伊家史料を読むか、彦根市と共同研究が促進されている茨城県から出ている研究書を読むのがいいと思われる。(地域的レッテルで研究論文を見てはいけない。くだらない小説家の妄言の方がはるかに危険!)

現在でも評価はいろいろあるが、(小説家の妄言は一切シカトして)井伊直弼がアナクロニックな長野修繕の弟子であり、開国といっても元々の思想が保守である事を念頭に置くと、安政大獄が発動された因果関係が分かる気もするけどね。

そうそう、オイラは井伊直弼をショッカーの地獄大使と同系列で述べる気は更々ないざますよん。逆に大老就任前の直弼の人生っておもしろすぎざますからねん。「風雲児たち」で出てきた気の弱い井伊直弼はホントピッタリ!流石はみなもと太郎セン
セ!

☆☆☆
絶版!
島田三郎
人物往来社
幕末維新史料叢書 1
書籍名・出版社 日付 感想 写真・評価
101 中山道を歩く 
中山道六十九次街道宿場ガイド
6月29日 日本橋から三条大橋まで、現代のルートから江戸時代当時の中山道探索ガイドの続編。今回は木曾から京都三条大橋までを描く。

オイラ的には木曾馬篭宿の島崎正樹の人生に興味ありで買った本ざますが、なんといっても圧巻なのが島崎正樹(小説・夜明け前では青山半蔵)が平田国学の信奉者として、次の時代にそぐわなくなり精神崩壊を起こしてしまう場面があったが、明治維新に勝者はないというのがまざまざと見せ付けられた場面でありました。

その他に妻篭や木曾川開発をめぐるエピソードなどが書かれています。

☆☆☆
安斎達雄
学研M文庫 よ 1-2
102 戦国大名 6月30日 戦国時代の後北条氏の動きを中心に、戦国時代とは何か?その本質を考える本。主に関東戦国時代を中心に書かれている。

主に守護大名から戦国大名に至る過程から、戦国期の領国経営、家臣団構成、戦闘、農村支配等を簡単に説明。新書とはいえ戦国期の状況について分かりやすく説明されている。特に後北条氏と今川氏、武田氏関連を中心に書かれているので、こちらに興味のある方にはお勧め本。本の最後に戦国期研究を始める際の参考資料が書かれている。

☆☆☆
大和田哲男
教育社 歴史新書55
103 徳政令
-中世の法と慣習-
7月1日 突如、債権を放棄され今までの借金をチャラにされてしまう法律が制定されたらどうなるのか?中世期の鎌倉幕府や室町中期頃から行われてきた徳政令について書かれた本。

現代の視点から考えれば、特定階層のみの借金がチャラでいいという法律ができれば大混乱は必至なのにも関わらず、なんでこのようなハチャメチャな法律が出来たのか?さらに鎌倉幕府の法律とはきちんと履行されたのか?江戸時代のように高札に掲示されたわけではないのに、鎌倉幕府法という法体系が存在するのか?また中世期の庶民は何を基準に法を捉えたのか?

法という存在と慣習という存在、この二つの存在より考察する本でしたが、庶民の感覚と武家の感覚の相違や、それによる悲喜劇などおもしろい逸話などが書かれていました。

☆☆☆
笠松宏至
岩波新書 218
104 海運の歴史 7月2日 上古から明治・大正時代までの海運の歴史が書かれた本。

船舶史ではなく、海運についての変遷が主で、海上輸送のルートから、難破したときの積荷の権利の発生や、瀬戸内海航路の発展と、それを阻害した関所や海賊たちの跋扈、倭寇の活躍、江戸時代鎖国期の海運業、そして明治時代を迎え三菱汽船の活躍と国策会社である日本郵船の誕生などが書かれていました。

☆☆
吉田良一
至文堂
105 県史7
福島県の歴史
7月3日 福島県の歴史を古代から現代までの変遷史を分かりやすく纏めた本。

福島のあけぼのから古代、中世の蝦夷の時代、前九年、後三年の役や奥州藤原氏の支配から鎌倉幕府による壊滅。南北朝に活躍した北畠顕家の活躍、戦国期に於ける芦名氏の支配と、江戸時代の福島地域の細分化と会津藩の誕生、飢饉発生による江戸中期から後期の行き詰まり、近代に於いて戊辰戦争を隔てて自由民権運動、大正デモクラシー、現代までの福島県の出来事が描かれている。

福島は一つではなく、江戸時代の領国支配では幕府の政治方針に沿ってバラバラに細分化され、纏まっているのが会津藩だけだったと言うこと。これが現代の福島でも会津地域、郡山などの仲通り、浜通りとの仲の悪さとなっているような。一つの県の本としては良くまとめられてますが、簡略化しすぎてポイントのみしか表記されていないきらいがありますが、まあ致し方ましざます。

☆☆☆
児玉幸多総監修
山川出版社
106 江戸お留守居役の日記
寛永期の萩藩邸
7月4日 萩(長州藩)江戸留守居役であった『福間彦右衛門』の書いた日記【公儀所日乗】を元に、対幕府との交渉や、長州内部での支藩との抗争と収集、江戸藩邸内部の四方山な出来事が書かれた本。

他藩との交渉から、老中との交渉や町人とのトラブル解消の為に町奉行とのコンタクトをとっての事態収拾。幕府に対しては格式などの確認で藩の権威を高める工作を図る一方、支藩である長府・徳山両藩との対立など、対外的政治折衝から、内部のゴタゴタ収集まで外交官としての留守居役の悪戦苦闘ぶりと、先の葉隠ではないが、
戦国時代が終わりキャリア中心の時代となると藩の命運を奉公人である留守居役が担うウエイトが高くなっていき、武士がキャリア化していく様がわかります。
留守居役というと、佐倉藩の依田学海の逸話が有名でありますが、接待・贈答に関しても寛永時代はあまり派手でもなかったようです。

その後の留守居役の逸話を知りたい方は、依田学海の逸話が書かれた「最後の江戸留守居役  白石良夫/筑摩書房」を併読「されると面白みが増すでしょう。

☆☆☆☆☆
チョーお勧め!
山本博文
講談社学術文庫 1620
107 武士団 7月6日 中世期に発生した武士団と、鎌倉武士団について論考した学術本。

武士団形成史論 
鎌倉時代に於ける武士団の構造

で構成。
武士団の発生については、中公文庫「日本の歴史6 武士の登場(百人組手86参照)
でも書かれていたが、誕生した正確な由来は未だに不明だそうである。この本は『恐らくこうではないか?』というあくまでも説という事であるが、原因については律令制の崩壊と荘園制度が深く関わっているようで、今のところは定説とされている律令制→荘園制度の発展→荘園の自警団としての武装集団→武士の成立というのはホントなのだろうか?
幕末を探求するにしても、律令制、荘園、そして武士団の成立は把握しても問題はないと思うざますよん。

☆☆☆
安田元久
塙選書 38
108 日本の修史と史学 7月7日 歴史家坂本太郎氏による日本史論。「日本史が過去から現在までどのように伝えられ、学習され、正確に伝承されたのか?」古代から現代(昭和30年代)までの修史の取り組みについて分かりやすく書かれている。更に坂本氏らしく、修史に関するスタンスについて、その時代ごとに批判・・・しかもポジティブにされている。

先に紹介した羽仁五郎の「日本人民の歴史」と違って、あくまでも一学徒としてのスタンスを保ち、歴史というものに対する態度と、その時代の官製修史から、明治以降の
“官”を離れた修史も論じている。と同時に歴史に対する親しみ方も所々で書かれている。

古事記、日本書紀から六国史と言われた官製修史や、平家物語、太平記のような物語、鎌倉幕府の吾妻鏡、江戸幕府が行った寛政重修諸家譜、水戸藩の行った大日本史、そして明治新政府の復古記を隔てて、大学教育機関のような独立組織が修史を担当し、戦前の国粋思想が歴史学に介入し、戦後にはマルクス史観が歴史学に影響を及ぼすなど、歴史学の功罪が挙げられている。

現代はどのように修史のスタンスが変化したのかなと書いてみようとしたけど、その現代すら明日には“歴史”となってしまうこの現状。マルクス史観すら現代では陳腐化しており(羽仁の歴史観など
社会・共産趣味者のネタでしかなくなっている)最善の歴史観などもしかしたら絶無ではないのかなと考えてみたり。
その時代で修史のスタンスが変わるのなら、オイラが今考えている歴史観なんて、明日には「陳腐」となっているかもしれん。

☆☆☆☆☆
チョーお勧め
絶版!
坂本太郎
至文堂
109 読書法 7月18日 古書百人組手最後の本に相応しく、我々ビブリオマニア(愛書狂)即ち
古書ヲタ
に相応しい御仁の本。

徳富蘇峰が読書マニアを始めて90年!過去、どのような本を読んだのか、また世界の古書屋からどのような本を手に入れたのか?読書のコツとは?など古書ヲタにはたまらない逸話が書かれている。特に全集購入などのあこがれの大人買いの話は本当にうらやましいぐらいざます。

また、蘇峰の読書が中国史関連だけでなく、英文学や英国史、英国法学史にまで及んでおり、この読書量こそがかの『近世日本国民史』を生み出したのかと関心しきり。
更に稀覯本の話が結構出てきており、朝鮮役で朝鮮半島を経由して明にたどり着いた日本の本が、なんと明治40年に日本に戻ってきた話など、なにやらスペクタルな雰囲気すらすら感じてしまう。
この本に出てきた書籍名だけで235冊!歴史学徒たるものが読書量が大事であるか、多方面の読書が大事であるかが分かる本である。と同時に蘇峰センセもやっぱり
オタクであったかと分かった本でした。

嗚呼!古書ヲタク、
そしてビブリオマニアに幸あらんことを!!

☆☆☆☆☆☆
超絶お勧め!
だが絶版!
徳富蘇峰
講談社学術文庫 534


2005年1月8日作成開始